質問しなくても、なぜか相手が話してくれる方法がある。話題の書籍『対話するプレゼン』の著者、岩下宏一氏は、「カウンセラーも使うこの方法はとても有効です」と言います。本記事では、プレゼンの場を「一方的に説明する場」から「対話の場」に変えることを提案した『対話するプレゼン』より、本文の一部を抜粋・加筆・再編集してお届けします。

「伝え返し」はシンプルだが強力なスキル
伝え返しとは、相手の言葉をそのまま返すことを指します。
復唱、とも言います。
この手法を用いると、相手の「自分の話をしっかりと受けとめてもらえている」という安心感や信頼感を一気に高めることができます。
復唱することで、相手の言葉や思いを尊重し、対話の中での共感や理解がさらに深まるのです。
伝え返しはこんな感じで行います。
【伝え返しの例】
「現状、うちの部署では10人の営業が動いています。ただし成果には個人により差があるんですよね。いくつかの問題があるのではと思っているのですが」
「問題、ですか」
「ええ。たとえば、ロケーションの割り当て。現在は、各担当に地図上で大まかに均等な面積を割り当てているのですが、必ずしも同じではないんです」
「同じではない、と言いますと」
「具体的には…」
といった具合に、太字の部分がそれにあたります。
相手の言葉をよく聞き、その中から「相手がもっと話したそうなこと」や「自分が特に興味を引かれたこと」を選んで、それをシンプルに、まるでポンと目の前に置き直すように提示するイメージです。
気になるポイントを見つけたら、こんな感じで相手に投げ返す
たとえば、相手が話している中で気になるポイントを見つけたら、
「それ、もう少し詳しく聞かせていただけますか?」や
「その部分、とても興味深いですね」
といった形で相手に投げ返すと良いでしょう。
集中して聞いていると、相手が「聞いてほしい言葉」には少しだけ力がこもったり、高い声になったりするのでわかります。
それを短く反復することで「そう、それを話したかったんです!」と、さらに関心ごとを話してくれるのです。
このアプローチにより、相手はさらに話を深めるきっかけを得ると同時に、自分の言葉がしっかり聞き取られ、受けとめられていると感じることができます。
使い慣れるまでに少し時間が要りますが、使えると相手がどんどん話をしてくれるようになります。効果は大きく、個人的にはぜひ使ってもらいたい技術です。