質問しなくても、なぜか相手が話してくれる方法がある。話題の書籍『対話するプレゼン』の著者、岩下宏一氏は、「カウンセラーも使うこの方法はとても有効です」と言います。本記事では、プレゼンの場を「一方的に説明する場」から「対話の場」に変えることを提案した『対話するプレゼン』より、本文の一部を抜粋・加筆・再編集してお届けします。

【話ベタが激変】初対面でも不思議なくらい相手が話してくれるシンプルなテクニックとは?Photo: Adobe Stock

「伝え返し」はシンプルだが強力なスキル

 伝え返しとは、相手の言葉をそのまま返すことを指します

 復唱、とも言います。

 この手法を用いると、相手の「自分の話をしっかりと受けとめてもらえている」という安心感や信頼感を一気に高めることができます

 復唱することで、相手の言葉や思いを尊重し、対話の中での共感や理解がさらに深まるのです。

 伝え返しはこんな感じで行います。

【伝え返しの例】

「現状、うちの部署では10人の営業が動いています。ただし成果には個人により差があるんですよね。いくつかの問題があるのではと思っているのですが」

問題、ですか」

「ええ。たとえば、ロケーションの割り当て。現在は、各担当に地図上で大まかに均等な面積を割り当てているのですが、必ずしも同じではないんです」

同じではない、と言いますと」

「具体的には…」

 といった具合に、太字の部分がそれにあたります。

 相手の言葉をよく聞き、その中から「相手がもっと話したそうなこと」や「自分が特に興味を引かれたこと」を選んで、それをシンプルに、まるでポンと目の前に置き直すように提示するイメージです。

気になるポイントを見つけたら、こんな感じで相手に投げ返す

 たとえば、相手が話している中で気になるポイントを見つけたら、

「それ、もう少し詳しく聞かせていただけますか?」
「その部分、とても興味深いですね」

 といった形で相手に投げ返すと良いでしょう。

 集中して聞いていると、相手が「聞いてほしい言葉」には少しだけ力がこもったり、高い声になったりするのでわかります。

 それを短く反復することで「そう、それを話したかったんです!」と、さらに関心ごとを話してくれるのです。

 このアプローチにより、相手はさらに話を深めるきっかけを得ると同時に、自分の言葉がしっかり聞き取られ、受けとめられていると感じることができます

 使い慣れるまでに少し時間が要りますが、使えると相手がどんどん話をしてくれるようになります。効果は大きく、個人的にはぜひ使ってもらいたい技術です。