初夏だというのに、もうこんなに……と思わせるような暑い日が多い日本列島。真夏にかかるものと思われがちな熱中症も、この時期から警戒する必要があるという。熱中症発症のメカニズムから対策まで、いまから学んで備えておきたい。
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初夏や梅雨から熱中症にかかる可能性について、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長はこう語る。
「熱中症は7~8月のイメージが強いですが、毎年この時期に気温が上がり、熱中症で緊急搬送されるケースが報告され始めます。梅雨も気温が上昇するので、熱中症対策はしたほうがいいです」
気温が真夏ほど高くない初夏に熱中症になるのはなぜなのだろうか。
「人間には夏の暑さに耐えるための暑熱順化という体温調整の仕組みがあります。この暑熱順化は短期・長期の二つがあります。短期的な暑熱順化は、四季がある日本では夏に備えてその少し前から始まります。アジアやアフリカなどの常に暑い地域の人たちは長期的に暑熱順化します」(大谷院長)
長期的な暑熱順化は、皮膚の血流量を増やして、皮膚からの熱放射で体温調整を行う。一方、日本人などに見られる短期的な暑熱順化は、汗をかいて気化熱が奪われることで体温を調整する。
「ある実験では、同じ暑い温度の部屋にタイ人と日本人が入ると、日本人のほうが汗をかくと報告されています。5月でも熱中症が報告されるのは、急に気温が上がり、暑い夏に向けて汗をかく短期的な暑熱順化の体作りができていないから。梅雨明けの7月に熱中症が多数報告されるのは、梅雨の時期を経てさらに暑くなって暑熱順化が追いつかず、ベタベタした汗をかくからです」(同)
一体なぜ“ベタベタした汗”がいけないのだろうか?
「5月や梅雨には体はまだうまく汗をかけず、汗は塩分やミネラルが多く含まれてベタベタしている。8月になってうまく汗をかけるようになると、塩分などが外に漏れ出ないよう再吸収できるようになり、サラサラした汗になります。だから8月はすごく暑くても、塩分調節はゴールデンウィーク~梅雨明けに比べてそこまで必要ないのです」(同)