言いたいことを言える
自由な空間を守っていきたい

――識者や専門家、政治家など、主張がまったく異なり、これまで平行線をたどっていた者同士が、言いたいことを言って理解し合う。それは日本にとってもいいことかもしれませんね。3つ目の質問です。「ヒートアップした出演者たちは、CMの間はおとなしく待っているのでしょうか?」

田原さん

田原 いや、ずっと話している。

――「話が長い人はどうやって止めるのですか?」という質問も来ています。

田原 適当に止めるんですよ。最近は、僕が意見を言い過ぎてよく叱られています。

鈴木 天下の田原さんに、ご注意申し上げております(笑)。でも例えば、戦争について家庭の中で話す機会が減っている中で、田原さんの戦争の体験談や、戦争を起こさせないという強い思いは貴重です。「朝生でこういう話があったけれどどうなの?」と、世代間で話すきっかけにもなると思いますし。田原さんは、戦後78年で日本社会がどのように変化していったか、若い人たちに伝えたいのですね。

――次の質問です。「それなりの年齢になり、夜中に番組を見るのが大変です。後日、ネット上でダイジェスト版を配信するといったことはしないのですか?」

鈴木 「こういう議論をした後だからこういう話になっている」というように、そのときの議論は、それまでの文脈の上に成り立っているものなので、切り取って編集するというのはなかなか難しいですよね。

田原 録画で見る人も多いですよね。僕としてはそれでも全然かまわない。

――「テレビ局の上層部やスポンサー、政治家やさまざまな団体から、圧力を受けたりしたことはありますか?」。

鈴木 それは1度もないですね。

田原 この番組は一切ない。なぜなら、批判するにしても、面と向かって一方的に批判するのではなく、皆で議論した上で考えて批判するからだろうね。

――「毎回、リハーサルはするのですか?」

鈴木 本番前に出演者の皆さんに20分ほど流れを説明したり、入場の練習をしたりはしますが、それ以外のリハーサルはないですね。

 あとは、毎週、田原さんとは1時間ぐらい打ち合わせをしています。メインの司会者とじっくり打ち合わせをしながら番組をつくれる、朝生の番組制作というのはぜいたくなんだよ、とよく言われます。それから、田原さんは電話魔なので、放送作家の久利さんとはよく電話で話していますね。本当に仲良しで、36年間、朝から晩までずっと番組制作の話をしています(笑)。

田原 今の若い人って、電話をしてくる人は迷惑なんだよね。電話をして出てくれるのは、鈴木プロデューサーと、久利さんくらい(笑)。

おふたり

――「素朴な疑問ですが、冒頭の音楽はずっと変わっていないのですか?」冒頭に流れる曲はJeff Newmann and His orchestraの『Positive Force』が使われていますね。

鈴木 長寿番組って、テーマ曲もタイトルロゴも、基本的には変えないんですよ。その番組の顔ですからね。「タモリ倶楽部」も、「徹子の部屋」も「ミュージックステーション」も変えていないですよね。ミュージックステーションは変えたことがありましたっけ? タイトルロゴはテレビの高画質化にともなって線を整えたりすることはありますが。「タイトルロゴ変わりませんね」と言われたりすると、「いや、線を少しきれいにしています」と答えています(笑)。

――「以前、パネリストの後方に大勢の学生さんたちがいましたが、もう彼らは戻ってこないのですか?」

鈴木 まあ、コロナ禍でしたからね。コロナ禍が落ち着いたらまた来ていただけるようにしたいですね、田原さん。

――「だいぶ深夜で、かつ長丁場ですが、田原さんは眠くならないのでしょうか?」

田原 全然。あんなおもしろい番組で眠くなることはないですよ。ストレスだってまったくない。

――「スタッフが慌ただしく動いているシーンがよく映りますが、あのスタジオにはだいたいどのくらいのスタッフがいるのですか?」

鈴木 約130人です。生放送の報道番組ですと、ほかの番組もだいたいそのくらいかな。スタジオのカメラマンは5〜6人です。360度、スタジオ全体を使った撮影なので、たまにスタッフが映り込んでしまいます。カメラマンはつねに、出演者がもっともその人らしく見える表情を探っています。朝生のカメラワークは、大島監督にもお褒めにあずかったんですよ。

――まだまだ質問はたくさん来ているのですが、お時間も迫ってきていますので、また次の機会に。最後に、おふたりは朝生をこれからどうしていきたいか、お聞かせいただけないでしょうか?

田原 いっぱいありますよ。でも何より僕はやっぱり、タブーや縛りをぶち壊していきたい。朝生はそれができる番組なんです。

鈴木 私は今まで通りでしょうか。朝生は、制作側だけでなく出演者の皆さん、視聴者の皆さんと共に模索しながら切り開いてきた歴史があり、田原さんも長年、タブーに挑戦し続けてきました。すでに知名度のある朝生を引き継いだ形になるので、それを継承しながら、皆さんが言いたいことを言える自由な空間を守っていきたいですね。

 以前、「朝生でこういうことを言っているパネリストがいましたが、自分も同じ考えだったということに、気づくことができました」という感想をもらったことがありました。深夜に起きて見てくださっている視聴者のかたがたと「時間を共有」し、「ためになったな」「おもしろかったな」と、そんなふうに思ってもらえるよう、これからも番組づくりを続けていきたいと思っています。

左より、番組進行の下平さやか氏と渡辺宜嗣氏、司会の田原総一朗氏、プロデューサーの鈴木裕美子氏、出演交渉を担当する吉成英夫氏。左より、番組進行の下平さやか氏と渡辺宜嗣氏、司会の田原総一朗氏、プロデューサーの鈴木裕美子氏と吉成英夫氏。
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