ジャーナリストの田原総一朗氏、キャスターの長野智子氏、上智大学の三浦まり教授に集まっていただき、「クオータ制」のメリットや、導入を阻む障壁は何か、日本で導入するための現実的な案などを話し合っていただいた。その模様を前編と後編に分けてお送りする。(進行・構成・文:ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)
クオータ制にはさまざまなタイプがある
強制力が強いものは?弱いものは?
――前回、日本の政治にクオータ制を導入する意味についてディスカッションしていただきました。そもそもクオータ制というのは、国によってその定義はさまざまなのでしょうか?
三浦まり(以下、三浦) おっしゃる通り、クオータ制といっても一概に説明することが難しく、その国の選挙制度とのマッチングによってさまざまなものがあるんですね。あと、その中で重要なのは、強制力の強さです。強いものから弱いものまであります。
――強いものですと、たとえばどういったものがありますか?
三浦 一番強いのは、クオータを満たしていない政党の立候補をできなくしてしまう。つまり、「(クオータを満たしていない政党からは)候補者擁立の名簿を受理しない」というもので、メキシコはこのタイプです。
でもこれを日本でやると、違憲の可能性が相当高いと思うので、日本がやれるそれなりに強い強制力としては、前回、田原さんがおっしゃられた、「政党交付金を減らす」といった罰則を設けることだと思います。最初は減額幅は小さい形で導入し、クオータ制度が周知されてきた段階で少し引き上げる。フランスがそうしたやりかただったのですが、日本も段階的に導入するのがいいのではないかと思います。
1934年、滋賀県生まれ。1960年に早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年、東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年にフリーに。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」等でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「城戸又一賞」受賞。早稲田大学特命教授を歴任(2017年3月まで)、現在は「大隈塾」塾頭を務める。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)、『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(冨山和彦氏との共著、KADOKAWA)など。
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――弱いものですと、どういったものがありますか?
逆に、政党交付金を少しプラスする形ですね。女性議員を多く出す政党ほど、交付金をたくさんもらえるようにするというやりかたがあります。
ただそれですとあまり効果がないのと、「政党交付金を増やす、そのために増税する」ということには、有権者の支持が得られないでしょう。「政党交付金を減額する、使う税金が減る」ということであれば、有権者としても納得できると思います。
「小さく減額をする」ことから始めるのが一番、現実的なところではないでしょうか。
田原総一朗(以下、田原) 政党交付金を減らす方向へ持っていく。
長野智子(以下、長野) そのためにはやはり法律を変える必要がありますね。
三浦 あと、比例名簿(※1)における順位もポイントなんですね。
女性の立候補者の割合を3割、4割にしなければいけないと決めても、当選しそうにないところにだけ女性を擁立し、結果的に皆、落選したら意味がありません。そのため、比例名簿の順位に対し、男女交互にするとか、上位5人のうち少なくとも2人は同性にするとか、ルールを設けることもとても重要です。
――三浦先生は以前、「クオータ制を実現するための勉強会」でゲストとしてレクチャーされた際に、「重複立候補」の問題点を指摘されていました。これについて詳しく教えていただけますか?