事業環境の変化に素早く対応するためには、ガチガチに要件を決めてしまうのではなく、要求仕様が不明確な時点から開発と改良を細かく積み重ね、機能やサービスを具体化していく必要性も増えている。こうした場合はアジャイル型の開発が適していることも多いのだが、ベンダーとの間でアジャイル開発に合わせた契約形態が整備されていない企業も少なくない。
従来、ユーザー企業は委託によって「コスト削減」を、ベンダー企業は受託によって「低リスク・長期安定ビジネスの享受」を得てきた。しかしレポート2.1は、この「低位安定」の相互依存関係では、双方がデジタル時代において必要な能力を獲得できず、デジタル競争時代を勝ち抜くことが困難になると告げている。
ユーザー企業はベンダー任せでIT対応能力が育たず、システムがブラックボックス化。ベンダーの切り替えもままならず、自社の顧客への迅速な価値提案ができない。ベンダー企業の方も、低い利益水準から多重下請け構造となり、売り上げ総量の確保が必要となる。すると生産性向上のインセンティブが働かず、低利益率のため新しい技術開発投資も困難で、デジタル時代に対応した提案はできなくなってしまう。
ベンダーも価値創造へかじを切り
ユーザーとは共創的パートナーへ
DXの本質である企業の変革の方向性として、レポート2は「レガシー企業文化からの脱却」とともに「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」を掲げた。また、企業が価値創造へと歩みを進め、アジャイル型開発などによって事業環境の変化に素早く対応し続けると、結果としてユーザー企業とベンダー企業の垣根はなくなっていく、という未来像も示した。DXを推進しなければならないユーザー各社だけでなく、ベンダー自身も現行ビジネスの維持・運営から脱却する覚悟を持ち、価値創造型ビジネスへかじを切るべきとも述べている。
ベンダー企業の目指すべき方向性
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ユーザーとベンダーそれぞれが変われば、その関係性も新たに考え直す必要がある。歴代レポートが訴え続けているのは、ベンダーが受託業務から脱却し、ユーザー企業との対等なパートナーシップを実現することである。
レポート2は、ベンダー企業がユーザー企業とDXを一体的に推進する共創的パートナーとなることが求められるという(上図の①)。ベンダー企業にはユーザー企業とアジャイルの考え方を共有しながらチームの能力を育て(共育)、内製開発を協力して実践する(共創)ことを促す。同時にパートナーシップの中でベンダー企業がユーザー企業の事業を深く理解し、新たなビジネスモデルをともに検討するビジネスパートナーへと関係を深化すべきとしている。