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うつからの回復には「自信」がポイントになる

わび:復活するきっかけはあったのですか?

下園:やはり「自信」を回復したことでしょう。自信とは、成功を重ねて、「もう失敗しないだろう」という予測ができるようになることだと思うんです。

 私の場合は、先ほども言ったように周りの理解のもとに少しずつ仕事をできたことにあると思います。カウンセラーとしてクライアントと面談をする際にも、回復を焦らないように抑えつつ、ある段階からは1歩ずつ挑戦して、「できた」という達成感を積み重ねて自信にするように伝えています。

わび:私の場合も、小さな達成感の積み重ねでメンタルダウンから回復しました。医師の指示に従いながらトレーニングをしたり、神社の御朱印巡りをしたりすることで、職場復帰への自信をはぐくむことができたんです。

下園:それはよかった。

わび:復帰後には、陸上自衛隊のある学校へと異動になるのですが、そこでの自衛官との出会いが私を大きく変えました。「自衛官はかくあるべき」と凝り固まっていた思考から、人生という物事を戦略的、大局的に見る術を獲得できたのです。

 その方は高度な知識を持っていましたが、いわゆる出世コースからは外れた人でした。以前の自分でしたら、自分の目標とする自衛官ではないとたいして気にもしなかったかもしれませんが、その生き方は爽快で、組織にとって本当に必要だと思うことは、上司に忖度することなく意見していました。

 この方の「人生戦略」とも言える生き方、考え方は、私のメンタルを回復する土台となりました。

下園:わびさんのキャリアを拝見していると、今の言葉は非常に納得できます。AOC(幹部上級課程)では戦術・戦略についても学びます。ただ、一般的な自衛隊幹部は、AOCで学んだことをきちんと理解できる人はそれほど多くないと思っています。なぜなら、現場での経験が少ないから。また、戦場では当たり前の「人の極限の心理状態」を知らないから。

 でも、わびさんはAOC入校前から師団司令部に所属し、宮崎県の口蹄疫問題や東日本大震災などの災害派遣の実績もある。さらに幸か不幸かメンタルダウンを経験した。だからこそ、その戦術的・戦略的な考え方を自分のものにできたのだと思います。その知識を生かし、退官後も異なる職場で活躍できている。しっかりとレジリエンス(しなやかな回復力)を身に付けられたのとだと思います。

わび:ありがとうございます。