自然環境に左右されやすい太陽光エネルギーの安定供給をいかに実現し、万一の事態にも備えるか。リチウムイオン蓄電システムを手がける東芝ITコントロールシステムやEV(電気自動車)充電設備を提供するニチコンなど他の企業とも連携し、苦節6年。17年に太陽光パネル、蓄電池、EVなどを連携し、放電も可能とした双方向の独立電源システムが完成する。同システムの中でも、“司令塔”となる要が同社独自開発のEMSだ。その最大のポイントが太陽光の発電状況や電気の使用量がパソコンやスマホの画面上で見える化できること。状況に合わせて、画面上で「電気をどこにためて、どう使うか」がコントロールできる。
「発電がピークとなる昼間に蓄電池・EVに電力をため、使用量の多い夜間に使う、あるいは天候が悪い日が続く場合は、電気料金の安い夜間電力を蓄電池・EVに充電し、その電力を昼間に利用することもできます」(菊池氏)。購入する電力とのバランスや電気の使用状況などに合わせた管理、省エネの最適化が実現する。天気予報に合わせた充電量の指示も可能だという。また、停電時でもシステムが自動で立ち上がり、数秒後には通常時と同じように電気を使うことができる。
自治体と災害協定を結び
地域への電力供給に貢献
●株式会社ACDC 事業内容/電気設備・消防用設備工事、保守点検、独立電源システム事業、従業員数/17人、売上高/2億2000万円(2022年度)、所在地/福島県伊達郡桑折町上町35‐1、電話/024‐582‐3202、URL/acdc.jp
同社では、実際に独立電源システムを搭載したZEB(ゼロエネルギービル)とZEH(ゼロエネルギーハウス)を支社、ショールームとして実現。対象としては中小規模のオフィスや工場、家庭を想定しており、既に数社から引き合いが来ているという。企業にとって大きな課題であるBCP対策、さらにSDGsやESG経営推進への一助ともなりそうだ。
新しいエネルギーを発信する企業として、「ふくしま再生可能エネルギー産業フェア(REIFふくしま2017)」で大賞を受賞。福島県全体で再生可能エネルギーを推進するコンソーシアムにも参画している。
また、会社が位置する桑折町、伊達市と災害協定を締結。災害時に同社所有のEVから避難所などに電力を供給するなど地域エネルギーの自立にも貢献する。「100%を自給自足することは難しくても、1~2割でもクリーンな自家発電に切り替え、大きな発電所に依存することのない社会を実現したいですね」と菊池氏。福島発・電気革命の行方に注目したい期待したい。
(「しんきん経営情報」2023年7月号掲載、協力/福島信用金庫)