ただし、当期純利益の全額を配当に回すとは限りません。むしろ、全額は配当せず、一部は翌期に繰り越すほうが普通です。いわゆる利益の内部留保です。

 なぜ一部を翌期に繰り越すかと言うと、それは翌期以降の新たな事業資金にするためです。これは企業自ら稼ぎ出したものですから、誰かに返済する義務はありません。

 したがって、利益の内部留保は返済不要の資金源である純資産に組み入れられます。具体的には利益剰余金に計上されます。

 このキャッシュの循環について、貸借対照表を中心に描くと【図表】のようになります。

 スタートは一番右側の株主と債権者という2人の資金提供者です。この2人からの調達資金を元に、貸借対照表の左側の資産、すなわち仕組みをつくります。

 そして、この仕組みを動かすことによって、税引前当期純利益が生み出され、そこから税金が控除された当期純利益の一部が右側の株主に還元され、残りは会社に留保されて、再び事業が繰り返されるということです。

 貸借対照表を中心にして見ると、キャッシュは右から入って左に抜け、また右に戻ってくるという循環を繰り返すのです。