収入格差のイメージ写真Photo:PIXTA

企業の社長の報酬はハイペースで上昇してきた。さらに、「まだ上がる」ための追い風も吹いている。政府に要請されながらも社員の賃上げがなかなか進まないのに、社長の報酬が今後もどんどん上がっていくのはなぜか。そして、サラリーマン社長とは目指すべき憧れのポジションたり得るのか。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

大手企業の社長なら
報酬はざっと2億円

 大手企業にサラリーマンとして入社し、出世の階段を上り詰めて社長になった場合、経済的にはどの程度の条件を手にできるものなのか。大企業に就職して社長になることは極めて難しいが、「アップサイドでどのようなものか?」は就職選択上も気になる問題だ。

 人事コンサルティング会社のマーサージャパンの2022年の調査によると、売上高1兆円以上の日本企業74社における社長報酬の中央値は約1億9000万円だという(「日本経済新聞」電子版、2023年2月20日)。ざっと2億円である。おおよそ、実感に(よく見聞きする数字に)近い調査結果だ。

 ちなみに、同条件で最高経営責任者(CEO)の報酬を見ると、日本は1億6900万円で、米国の11億8100万円やドイツの7億2700万円には、まだかなりの差がある。

 とはいえ、社長の報酬は一貫して上昇する傾向にあり、そこそこに急ピッチだ。大手上場企業で役員報酬が1億円を超える「1億円プレーヤー」が何人いるとニュースになったのが数年前だから、結構なペースだ。何よりも、一般社員の手取り所得が長年ほとんど横ばいの中で、社長周辺の幹部社員の報酬だけは上げてきたのだから、ある意味ですさまじい。「すさまじい」よりも「あさましい」と言いたい人もいるだろう。