配当には上限がある

「当期純利益は株主に対する配当に使われる」と言いましたが、これは見方を変えると、「ある一定の範囲内でしか配当できない」ということです。配当は無制限にできるわけではなく、上限額があるのです。

 この上限額のことを「分配可能額」と言います。

 なぜ、配当には分配可能額という上限があるのかと言うと、それは債権者保護のためです。

 配当は株主に対する資金流出になりますから、過度な配当をすると、もう1人の資金提供者である債権者に対する弁済能力が低下してしまいます。

 しかも、株主は全員が有限責任しか負っていませんから、会社のオーナーでありながら、債権者に対して、事実上、ほとんど何の弁済責任を負いません。そんな株主に無制限に配当をしたら、債権者は全く保護されないことになってしまいます。そこで、配当に一定の制限を掛けているのです。

 分配可能額の計算は少々複雑なので詳細な計算式は割愛しますが、その中心となるのは当期純利益と利益の内部留保です。要するに、会社自身の力で稼いだ範囲内でしか配当できないということです。

 これは考えてみれば当たり前で、もしそれを超過して配当したら、それは株主から出資された分を配当に回していることになります。

 それは、今まで親から仕送りをしてもらっていた学生が晴れて就職したので、「これからは自分が実家に仕送りをするよ」と言っておきながら、実は今まで親から仕送りしてもらっていたものを返しているだけ、みたいな話です。これでは配当でも何でもありません。