安倍派漂流で迎える人事の季節、幹事長・自公関係・国交相の行方6月18日、東京都新宿区の早稲田大学で行われた首相、岸田文雄の講演に訪れた元首相の森喜朗。自民党最大派閥の安倍派に隠然たる影響力を持ち、岸田とのパイプも太い Photo:JIJI

 政界最大の実力者だった安倍晋三(享年67)が凶弾に倒れたのは2022年7月8日午前11時半。それから1年の時が流れたが、安倍が抜けた穴を政界全体が今も埋められずにいる。最大の要因は、所属議員が100人を超える自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)が会長すら決めることができないまま、一周忌を迎えたことにある。安倍が自身の後継者を育ててこなかった結果と言っていい。

 そのため安倍派は「5人衆」あるいは「5人組」と呼ばれる幹部5人による集団指導体制で派閥の維持、運営が行われるとの報道が続く。その5人とは、自民党国対委員長高木毅(衆院当選8回)、官房長官松野博一(同8回)、経済産業相西村康稔(同7回)、党政調会長萩生田光一(同6回)、そして参院自民党の幹事長世耕弘成(参院当選5回)だ。

 しかし、この5人の人選は派閥の総意でもなく、投票で選ばれたわけでもない。清和会の元会長で首相経験者の森喜朗の一存による、いわば「森指名」が発端だ。それが政界に定着したのは首相の岸田文雄がこの森指名にお墨付きを与えたからにほかならない。

 昨年8月、岸田は安倍の死と参院選の結果を受けて、内閣改造と党役員人事を断行した。その直前に森が岸田に耳打ちしたのがこの5人の処遇だった。

「西村は内閣で、萩生田は将来の幹事長候補だから党務を学ばせてほしい」