八王子の元ヤン・萩生田光一氏の「安倍派会長」就任説が強まる永田町の事情自民党の政務調査会長を務める萩生田光一氏 Photo:JIJI

安倍晋三元首相の死去後、空席が続いている自民党安倍派(清和政策研究会)の会長ポスト。その座を巡って今、萩生田光一氏が最有力ではないかという言説が永田町で流れている。さまざまな思惑が絡んだその事情を解き明かす。(イトモス研究所所長 小倉健一)

自民党の最大派閥「安倍派」の
会長ポストは空席が続く

 96人の国会議員を擁する自民党最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)は、昨年夏に安倍晋三元首相がテロリストの凶弾に倒れて以来、派閥会長の座が空席のままだ。

 昨年9月の国葬後に、塩谷立会長代理が会長に昇格する案が浮上したものの、同派の若手議員が中心となって反対意見が巻き起こり頓挫した。塩谷氏の会長昇格を巡っては森喜朗同派元会長も反対していたという。

 安倍派にいまだに隠然たる影響力を与える森元会長が月刊誌『正論』(2022年9月号)に同派会長について考えを述べている。それに従えば、同派会長は、松野博一、西村康稔、萩生田光一、高木毅、世耕弘成の5氏のうちいずれかの人物が、「(筆者注:昨年8月時点で)少なくとも二年か、三年のうちで自然に序列が決まっていく」のだという。

 この森元会長の意中の5人のうち、現在官房長官を務める松野氏と国会対策委員長を務める高木氏は、いわゆる「調整型」の政治家で強いリーダーシップを発揮するタイプではない。本気で派閥を強化し、政権に対して強い影響力を行使しようと考えると、西村、萩生田、世耕の3氏に絞られてくる。

 また、安倍元首相も生前に派内の首相候補について、下村博文氏、西村氏、萩生田氏、松野氏の4人を挙げている。ということは、森・安倍両元会長の意中の人物で重なるのは、西村氏、萩生田氏ということになる。

 1月31日に、萩生田氏が「会長席をいつまでも空席にしておくわけにはいかない」「一周忌をめどに、しかるべきリーダーを立て、足らざるところがあれば支えていく体制でやっていきたい」(ニコニコ生放送)と発言したことから、夏までに安倍派の会長を決める機運が醸成されている。

 そんな中、萩生田氏を「将来の首相候補」として公の場で高く評価してきたのが、菅義偉前首相だ。「非常に期待される政治家。度胸もある」などと持ち上げている。

 安倍派会長の座を巡って有力議員たちが火花を散らす中、菅前首相が萩生田氏を持ち上げている真意は何なのか。ここで自民党の党内情勢をおさらいしておこう。

 そして今、永田町では萩生田氏の安倍派会長への就任説が強まっている。党内情勢も含めて、さまざまな思惑が複雑に絡み合っているその事情について解き明かしていこう。