感染から100日以上経過しても…

 その結果、精液のさまざまな指標について、新型コロナウイルス感染の前後で統計学的に有意な差が認められた。例えば、精液の量は20%減少し、精子の濃度は26.5%低下していた。また、精子の数は37.5%減少し、前進できる精子の割合を示す運動率は9.1%低下し、生存精子数は5%減少していた。

 COVID-19罹患の影響は、精子の運動率と全精子数に最も顕著に表れていた。約半数の男性で、新型コロナウイルス感染前と比べて感染後には、全精子数が57%減少していた。一方、精子の形状に対する有意な影響は確認されなかった。精子の濃度と運動率は感染から100日以降に採取された精液でも改善が認められなかった。

 これらの結果についてNúñez-Calonge氏は、「感染から100日以上経過した時点でも、精液の質に対する新型コロナウイルス感染の影響は持続していた。たとえ軽症であっても、COVID-19罹患がもたらす恒久的なダメージがその原因となっている可能性はある。臨床医は、COVID-19罹患が男性の生殖機能に与える有害な影響について認識しておくべきだ」との見解を示している。

 Núñez-Calonge氏は、免疫システムに対する炎症性のダメージがこうした現象に関与している可能性を示唆し、「炎症のプロセスでは、免疫システムに関与する白血球の浸潤によって生殖細胞が破壊されたり、男性ホルモンを分泌する間質細胞に影響が及び、テストステロンの量が低下したりする可能性がある」と説明している。

 ただし、Núñez-Calonge氏は、研究で示された精液の指標の悪化について、「新型コロナウイルスが直接的な原因となっているとは限らない」と話している。また、「COVID-19に罹患した男性では、生殖機能に関わるテストステロン値が大幅に変化することが先行研究で示されているが、今回の研究ではホルモン値の測定を行わなかった」と述べている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2023年6月27日)

https://consumer.healthday.com/sperm-2661880734.html

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