コロナ5類移行でも、救急医が懸念する「残された課題」の正体Photo:PIXTA

日本政府が、新型コロナウイルスの位置付けを「2類相当」から「5類」に変更した。世の中では「コロナ禍はすでに明けた」というムードが漂っている。だが、医療現場の最前線で命と向き合う救急科専門医・集中治療専門医の筆者は「残された課題はいまだ多く、第9波の襲来を防げない可能性は十分にある」と考えている。そう言い切れる理由と、社会的活動を制限せずに課題と向き合う方法について緊急提言する。(名古屋大学医学部附属病院救急科長 山本尚範)

「コロナ収束ムード」漂うも
「第9波」到来リスクは残る

 2023年5月8日、日本政府は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)を感染症法上の5類へと移行した。WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長も、同5日にコロナの「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了すると発表した。

 米国も5月11日に「国家非常事態宣言」を終了するなど、国内外でコロナ禍の終焉(しゅうえん)が進んでいる。

 世の中が「ポストパンデミック」に移行したことは喜ばしいが、コロナウイルスの病原性や感染力が変わったわけではない。この感染症は、免疫力の弱い人にとって、依然として脅威となり得る。さらに、コロナ感染後の後遺症は、あらゆる世代にとって見過ごすことはできない。

 広く知られている通り、コロナによる死亡者数の多くは60歳以上で、80代が最多である。オミクロン株が主流になって以降は病原性が下がったが、感染力が増し、感染者数は急増したため、オミクロンによる第8波の死者数はこれまでの波で最多だった。

 政府の大規模抗体調査を見ると、第8波が終盤に差し掛かった本年2~3月の調査で、感染による抗体を持っている人はおおむね3割前後だった。これとワクチン接種による抗体保有者を足すと、100%に近い。

 欧米ではすでに8割近い人が既感染者である地域も多く、感染とワクチンによるハイブリッド免疫により、大規模な流行が減ってきたと考えられる。

 他方、かつて大規模な流行を抑えてきた東アジアやオセアニア地域では、オミクロン株以降、感染者数が急増した。日本でもワクチン接種から時間が経過し、ワクチン免疫はこれから低下する。第9波が来る可能性は十分にあり、ウイルスの免疫回避性が増し、人々の接触が活発になるにつれ、死者数が過去最高となる懸念もある。

 だからといって、もはや社会経済活動を制限することは多くの国民の理解を得られまい。これまでの知見を頼りに、より的を絞った効果的な対策をする必要がある。