みんなの銀行に学ぶ
「枠から脱した」ビジネス
冒頭で紹介したみんなの銀行は、「全てのサービスがスマートフォンで完結する銀行」を標榜し、口座開設数は23年5月時点で67万口座、15~39歳のデジタルネイティブ世代で71%の利用がある。ユーザーは首都圏を中心に、人口動態に沿った形で利用されている。
23年3月時点での預金金額は227億円、当座貸越は23億円、アプリ完結のローンサービスの貸出金は48億円となっている。また、日本の銀行では初めてFAPI(Financial-grade API)に準拠したBaaSプラットフォームを開発し、FAPI認証でシームレスな体験を実現した。こうして銀行業務以外のサービスにも展開したプラットフォーマーになろうとしている。
このようにICTの発達は、地銀が従来持っていた地域的制約を取り払う。デジタルネイティブは、たとえ北海道に住んでいたとしても、一度もFFGの支店に物理的に訪問しなくても、口座を作って顧客になれる。地域的な制約がなく、全国をマーケットにした地方銀行の枠から脱してビジネスを変革した好例ではなかろうか。
地銀がDXで勝つには、顧客と金融サービスやその他サービスとつながった新たなデジタルコミュニケーションビジネスへと、既存のビジネスを変革できるかどうかだと筆者は考える。
ただし、デジタルバンクへの変革だけを追求すると、差別化のない競争に陥る可能性がある。地理的制約を超越する機能獲得を目指しつつ、各行の出自地域における信用力やブランド力の維持向上を追求すべきであろう。
店舗とデジタルの利便性を活かしたハイブリッドで複眼的な戦略により、他業種からの新規参入組との差別化が初めて可能となる。唯一無二の特別な銀行としてあり続けることが、生き残るためには必要だ。
(フロンティア・マネジメント マネージング・ディレクター 佐野智英)