根本解決にならない
地銀の伝統的な成長戦略
地方銀行の伝統的な成長戦略は、地域補完型の提携・合併といった地理的視点からの再編だった。FFGも福岡銀行と熊本銀行の経営統合や、親和銀行や十八銀行の買収などを通じて成長を模索してきた経緯がある。
しかし、地方銀行同士の統合だけでは地方の人口・若年層の減少という問題の根本解決にはならない。加えて、金融に関する技術開発(Fintech)の急速な進展で、銀行業務への参入ハードルが下がり、異業種が金融業へ参入する例が続出してきた。
金融機関の存在意義が脅かされる現在、地方銀行はその脅威を最前線で受けている。そのため地方銀行は、地域補完型の再編という伝統的な成長戦略とは別の道を模索し始めている。
例えば、島根銀行や千葉銀行は、ネット金融大手との連携などを梃子に、ITやデジタル分野で取引先企業の経営課題を解決するサービスを提供している。ただし、これは各地銀が存在している地域限定という地理的制約を超えた格好になっていなかった。
地銀が地域制約を
超越するためのDX
地銀が従来の地域制約を超越できるかどうかは、デジタルトランスフォーメーション(DX)次第である。特にBaaS(Banking as a Service)は、利便性の高い新たなサービスを実現する手段として、金融業界において大きな注目を集めている。
BaaSとは、銀行が提供するサービスや機能をAPIを利用してクラウドサービスとして提供することを指す。銀行以外の事業者が自社のアプリやサービスに金融機能を組み込んで、利用者に提供することもできる。
BaaSは銀行以外の事業者による金融事業への参入を加速させる。これは一見、地銀にとってネガティブに感じられる。しかし、競争力で劣後する地銀の淘汰を加速することで、勝ち組地銀の成長力や収益性を引き上げる触媒になると考えられる。