決算書で読み解く! ニュースの裏側#18地銀Photo:PIXTA

地方銀行99行のコア業務純益合計は、3年連続で増益率が10%超えと底堅い。だが債券価格の急落で含み損を抱えたままの地銀も多く、「時限爆弾」となりかねない。損切りに踏み切った有力行との格差も広がっている。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側2023夏』(全27回)の#18では、地銀決算の裏側を読み解く。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「週刊ダイヤモンド」2023年6月24日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

コア業務純益は10%超の増益率でも
含み損処理で「格差」急拡大

 銀行の業務純益は、一般企業の営業利益に相当する。この業務純益から一時的な変動要因の影響を除いた利益をコア業務純益という。全国の地方銀行99行のコア業務純益は、2023年3月期まで3年連続で10%超の増益率となった。

 一見すると収益力の底堅さがうかがえる。その要因は、コロナ禍で売り上げが減った企業に対して銀行がノーリスクで貸し出せるゼロゼロ融資や、法人向け手数料ビジネス好調の恩恵が大きい。

 ところが、国債などの債券の売却損益を通算した実質業務純益で見ると様相が異なる。99行全体で前年度比24%減に沈み、秋田、常陽、福井、福邦、紀陽の5行が赤字だ。

 その理由は、国債等債券関係損益が99行で計6400億円の損失となっているためだ。国債等債券関係損益とは、銀行の財務諸表に使用される勘定科目の一つで、国債や外国債券(外債)、社債などを売却したり償還や償却で得たりする損益の合計を指す。この巨額損失計上は23年3月期、国内外で金利が上昇したため、価格が急落した債券を売却する“損切り”に各行が動いた結果だ。

 だが、損切りできる体力がある銀行はまだましだ。例えば実質業務純益が赤字の秋田銀行は、保有株式の売却益で66億円を計上し、当期利益は33億円の黒字を達成した。債券の含み損を処理した一方、保有株式を売却することで最終的な利益を確保できたわけだ。

 深刻なのは、債券を取得した価格から時価を差し引いた含み損を抱えたままの銀行である。

 含み損を抱えたままの地銀に一体どんなリスクが待ち受けるのか。そしてどの地銀が危険なのか。次ページで明らかにする。