犯罪被害に遭ったのに、警察に刑事告訴を断られたら?

 もし自分が犯罪被害に遭ってしまったら、犯人を処罰するにはやはり刑事告訴で警察に捜査を要求し、罪を明らかにして裁判で刑罰を与えるしかない。

 しかし、犯行が相当明らかな場合でも、今回のAさんのケースのように警察は刑事告訴を「できない」と言ってくることが少なくない。過去、当事務所へも数多く相談が寄せられている。

 本来、告訴状に記載するのは「分かる範囲」でよいのだが、以下のような点について、できるだけ明確にすることで、より受理されやすくなる。

・被告訴人(=加害者)の詳細
・告訴の趣旨(何の罪に該当するのか)
・告訴の事実(いつ・どこで・誰が誰に・どのような動機で・なにを・どのように行ったのか)
・証拠書類(診断書、目撃者による陳述書など)

 しかし、犯罪被害者はショックや動揺から冷静な行動ができないこともありうるし、警察で威圧的な対応を取られれば、何も言えずに引き下がってしまうこともあるだろう。そのような場合、専門家である弁護士に相談するのも有効だ。

 弁護士は刑事裁判では加害者の弁護をするもの…と思っている人も多いが、犯罪被害者の支援も弁護士の重要な業務の一つである。今回相談を受けた当事務所では、専門知識に基づいてAさんに以下のような助言を行った。

【犯行現場が不明な点について】
● 店の所在地などから、犯行現場の駐車場を特定することは可能である
● 犯人の取り調べにより犯行現場は判明する
● 捜査で犯行現場を特定することは警察の役割であり、それができないという理由で刑事告訴の受理を拒む理由には全くならない
● 捜査の結果、万が一駐車場の位置が不明であったとしても、起訴するうえで支障はない

【犯人が不明な点について】
● 店舗従業員から聞き取りを行うなどして、割り出しは十分可能である
● Aさんが泥酔状態になる前にBとLINEを交換していたため、LINE IDから個人を特定できる

 これらをもとに弁護士が警察へ同行し、警察の言う「受理できない理由」を一つ一つクリアにした結果、当初の警察の言い分をくつがえして刑事告訴は受理された。

 いつ何時、自分が犯罪被害に遭ってしまうかは予想がつかない。不幸にも「警察が被害届や刑事告訴を受け付けてくれない」という事態が起こってしまった場合も、対処方法があることを覚えておいてほしい。