夫婦のシルエット写真はイメージです Photo:PIXTA

昨年のクリスマスに、埼玉県飯能市で親子3人が近所に住んでいた男に鈍器で殺害された事件を覚えているだろうか。男の動機は未だに判然としないが、過去のトラブルの経緯も含め、近隣住民による凶悪事件として大きく報道された。実は全国の交番に寄せられる相談件数の中で、かなりの割合を占めるのが近隣トラブルで、そこから凶悪犯罪に発展したケースは数知れない。元警察官の経験を生かし、これまで1万件を超える近隣トラブルを収束させてきた事業実績から、近隣トラブルはなぜ起こるのか、そして、なぜそれがエスカレートしていくのかを分析した。どうすれば最悪の事態を防げるのか、身を守る参考にしてほしい。(ヴァンガードスミス代表取締役 田中慶太)

近隣トラブルとは
「お互いさま」と「非常識」の境界線

「ゴミ出しがなっていない」「駐車マナーがなっていない」「赤ちゃんや子どもの声がうるさい」「ドアの開閉や足音が響く」など、近隣トラブルの多くは、日常で誰もがやってしまうようなことが原因だ。

 明らかに相手に問題のある場合もあるが、多くの場合はごく普通に生活していても起こり得ることだろう。お互い少し我慢して、気を使えばそれだけで解決する、いわば「お互いさま」で済む話でもある。

 だが許容範囲を超えると「非常識」へと認識が変わり、近隣トラブルへと発展するのである。厄介なのは、この許容範囲が人それぞれの価値観によって違ってくるということだ。

 たとえば、赤ちゃんの泣き声や子どものはしゃぐ声・足音は、子育て中の人にとっては「しかたがないこと」と理解できる。しかし、そうでない人から見れば迷惑な騒音にもなる。赤ちゃんを必死にあやして泣きやませようとしたり、室内を駆ける子どもを何度も注意し疲弊する保護者の姿を想像することができなければ、腹を立てることもあるだろう。

 一方、苦情を伝えず、ひたすら我慢し続ける状態が続くと、当然ながら相手は何も知らないため状況が変わることはない。小さな不満は蓄積され続け、あるとき何かのきっかけで不満が爆発してしまうのだ。

 どんな近隣トラブルが、凶悪な犯罪につながる可能性があるのか?一体どうやって解決すればいいのか図解を用いながら説明しよう。