大学弁論部は政治との関わりが濃く、出身者は政治家が多いというイメージは強い。だが、東大や早慶、明治、中央の各大学の弁論部OBの顔触れからは、大学により異なるカラーが見て取れる。特集『知られざるエリート人脈 大学弁論部の正体』(全10回)の#9では、主要大学の著名な弁論部出身者117人を紹介する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
政財官学の各界に広がる弁論部人脈
雄弁会はメディア、学界でも存在感
名門弁論部の早稲田大学雄弁会は1980年代後半から90年代にかけて首相を相次いで輩出し、世間の注目を大いに集めた。雄弁会OBの首相こそ2000年の森喜朗氏以降は誕生していないものの、政界に根を張る雄弁会人脈は日本政治を動かしてきた。
弁論部が「政治家登竜門」と同義に語られることが多いのは、当時の雄弁会のイメージによるものが大きいのは間違いない。だが、雄弁会だけでなく主要大学の弁論部OBの顔触れを見ると、弁論部のネットワークは政界だけに広がっているわけではない。しかも、大学によってOB人脈が強い分野も異なるのだ。
東大や早慶、明治大学、中央大学といった100年以上の歴史を持つ弁論部の主要なOBの顔触れを基に、政財官学の各界に根付く人脈を見ていこう。
まずは雄弁会の主なOBは以下となる。
雄弁会は圧倒的に政界に強い。石橋湛山や竹下登氏、海部俊樹氏、小渕恵三氏、森氏といった5人の首相に加え、堤康次郎や西岡武夫氏ら3人の衆参議長を輩出している。
現職の国会議員の顔触れを見ても、元財務相の額賀福志郎衆院議員や、元文部科学相の下村博文衆院議員といった閣僚経験者がずらりと並ぶ。下村氏は雄弁会の幹事長経験者でもある。首長では、元キャスターで神奈川県知事の黒岩祐治氏がOBだ。
一方、雄弁会は学界やマスコミにもOBを多数送り込んでいる。学界OBでは、今年3月末まで東海大学学長を務めた経済学者の山田清志らが著名だ。また、マスコミでは政界と並んで多くのOBが活躍する。日本経済新聞社の社長を務めたOBもいる(本特集#5『日経やテレ朝のトップにも!新聞・テレビ「弁論部OB幹部リスト」を初公開』参照)。
実は、ビジネス界にもOB人脈は存在する。商工組合中央金庫の関根正裕社長は、第一勧業銀行(現みずほ銀行)などを経て、18年に現職に就いた。元伊藤園副会長の江島祥仁氏は雄弁会の幹事長経験者だ。コンサルティング大手のデロイト トーマツ グループ執行役の松江英夫氏もOBだ。
次に、早稲田のライバル、慶應義塾大学弁論部を見ていこう。