今後、社会保険料率はどうなるのか。18年公表の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」を見てみよう。

 成長率が1%程度の低成長ケースでは、社会保障給付費は18年度で121.3兆円(対GDP比21.5%)、25年度で約140兆円(同21.8%)、40年度で約190兆円(同24%)と予測していた。ただ、23年度の社会保障給付費(予算ベース)は134.3兆円(同23.5%)で、25年度の予測値(同21.8%)を既に1.7%ポイントも上回っている。

 仮に成長率0.5%でこの勢いが継続すれば、40年度の社会保障給付費は対GDP比28%に急上昇する。これは18年度の約1.3倍で、単純計算で社会保険料率も約1.3倍になる可能性がある。

 かつて小泉政権期は、厚生年金の保険料率の上限を18.3%に定めた。一方、医療・介護の保険料率には切り込んでおらず、現在も上限が存在しない。子育てを担う現役世代の負担を抑制するためにも、政府は40年度・50年度までの社会保険料率の上昇幅に関する試算を早急に示した上で、全体の社会保険料率に上限を定めることも検討すべきだろう。

(法政大学教授 小黒一正)