そこで経営陣ができることは、在庫の中古車を投げ売りすることです。店頭では大幅な値引きセールが行われるでしょうけれども、問題は中古車の品質を消費者がどう考えるかです。

「きちんとメンテナンスされていないのでは?」
「不具合が隠されているんじゃないだろうか?」

 そう考えて、大幅な値引きをされた中古車をビッグモーターから買うことも消費者は躊躇(ちゅうちょ)することになるでしょう。

 そうなると、経営としては中古車在庫をオークションで換金売りするようになります。

 実は、昨年の夏までは中古車市場は空前の高値をつけていました。コロナ禍や上海ロックダウンのあおりを受けた部品の供給遅れや半導体不足で新車の納車が1年待ちといった状況となり、人気車種の中古価格が新車価格を上回っていたのです。

 その半導体不足が解消され始めたことや、大きな買い手であるロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。

 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきたわけです。これまで供給不足から高値になっていた中古自動車が、今回の事件によりビッグモーターが在庫を放出すれば、逆に供給過多に転じてしまう。そのため、中古車価格の暴落が起きる可能性が高まってきたのです。

 業界にとってはとんだとばっちりになりますが、この先、中古車市場は大いに冷え込むことになるでしょう。