長期金利上限、1%に一気に引き上げ
事実上の金融引き締め
日本銀行は7月27、28日の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)で、長期金利が0.5%を超えても容認、事実上、長期金利の上限を1%に引き上げることを決めた。
長期金利の誘導目標の0%程度、変動幅は±0.5%に据え置かれたものの、指し値オペの実施レートが1%に引き上げられた。
日銀は今回の措置はYCCの運用の「柔軟化」であって、金融引き締めの意図はないと説明している。
これは、「現在の日本経済は、賃金の上昇を伴う形で2%のインフレターゲットを達成できる状況にはなく、粘り強く金融緩和を継続する必要がある」→「そのためにはYCCの枠組みを持続させなければならない」→「持続性を高めるためには運用の柔軟化が不可避」という理屈だ。
しかし、これまで0.5%以下に抑え込むことに躍起になっていた長期金利の上限が一気に1%まで引き上げられることになった訳で、事実上の金融政策の修正といっていい。
黒田東彦前総裁時代の超金融緩和状態から、いかにして金融政策を正常化させていくのか、その手腕に注目が集まった植田和男新総裁だったが、4月の就任以降、これまで2回の決定会合では政策修正を見送っており、ようやく金融引き締めへの第一歩を踏み出したといえる。
早ければ今年度後半にはYCCは完全撤廃される可能性があるが、とはいえ金融政策の正常化の道のりは長い。