定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる!マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されます。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

「相続税を無料で査定します」にだまされるなPhoto: Adobe Stock

無料の裏には「売りたい商品・サービス」が

 相続税がどのくらいかかるかを無料で査定してくれる業者さんが増えています。我が家に相続税がかかるのか、かかるとしたらどのくらいかかるのかは、知っておきたい情報ですから、最初の一歩として利用するのは悪くないと思います。

 ただ、相続税の試算は結構骨の折れる作業です。本来、無料なんかじゃとてもできません。ではなぜタダでやってくれるのかといえば、その裏に「売りたい商品・サービス」があるということです。そして、そのためにはなるべく高めの相続税がかかったほうがいいわけです。

 相続税には本書でも紹介した自宅の土地を8割引きにしてくれる特例や配偶者(妻や夫)がもらった財産なら、1億6000万円まで(それを超えても法定相続分まで)は税金がかからない制度などがあります。そういった大型特例を使わずに試算をすれば、びっくりするような相続税がはじき出されることもあるわけです。

 もし、そういった業者さんが親御さんに近づいて、アパート建築や節税サービスをすすめてきたら、そういったものに飛びつく前に、一度、税理士に相談することをすすめてください。

信託銀行でもひどいケースが

 私が体験した例でもこんなことがありました。
 友人の親御さんが「遺言信託契約」を信託銀行と結ぼうとしているので、相談にのってほしいと言われたのです。「遺言信託」とは、信託銀行などが遺言書作成のサポートをして、遺言執行人を引き受けるサービスです。

 その信託銀行が出してきた相続税の試算をチェックしたところ、間違いだらけで、びっくりするような高額の相続税が書かれていました。しかも遺言書も勝手に書いてきたそうで(!)、遺言書への押印の日時まで決められており、友人家族は大変戸惑っていました。さらに、その遺言書も、節税とは真逆のかえって税金が高くなる内容でした。もちろん、遺言執行人はその信託銀行です。

 こんなひどいケースはめずらしいとは思いますが、いずれにしろ遺言信託にかかる費用は高額です。

 信託銀行等が設定する遺言執行料は、財産の額が増えるほど高額になる仕組みになっていて、最低金額も150万円以上と決められているところがほとんど。仮に財産が1億円程度の場合200万円前後の費用が掛かってきます。この費用には、相続税の申告料や不動産の登記費用は入っていません。

 そういったことも理解しないまま、契約をしてしまう人も多いようで、一旦契約してしまうと、あとから子どもたちがこの契約を破棄しようとしても、破棄できないようになっています。
 大手である銀行に相続を頼めるという安心感を望む人であればいいのかもしれませんが、理解しないまま「銀行なら安心」と契約を結ぶのはおすすめできません。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。