米半導体大手インテルが買収を試みたことを責めることはできない。だが将来は、どのテック大手にとっても買収の試みは無謀と言われるようになるかもしれない。インテルは、他社が設計した半導体を製造するメーカーになるという、リスクの高いイチかバチかの賭けに出た。この「ファウンドリー(受託生産)」という事業モデルは、長らく自社設計での製造に専念してきたシリコンバレーの先駆者にとって方針の大転換となる。そのため、同社が外部の支援が必要と判断し、イスラエルの半導体受託生産会社タワーセミコンダクターを約54億ドル(約7880億円)で買収しようとしたのも、さほど驚きではなかった。それから1年半。結局、中国当局から承認が下りず、計画はとん挫した。16日に買収計画の破棄を発表したインテルは、誰を非難するでもなく、そつなく振る舞った。中国は同社の売上高の27%を占め、半導体業界の何層にも及ぶサプライチェーン(供給網)が国内に張り巡らされている。インテルは自前で受託生産する計画も進めており、今年に入り同社ベテランのスチュアート・パン氏を責任者に指名した。バーンスタインのステイシー・ラスゴン氏によると、インテルはタワーだけが頼みの綱だったわけではなく、パン氏の人事もそれを裏付けている。ラスゴン氏は16日のメモで「全体として見ると、一つの買収計画破棄が衝撃になるとは思えない」と指摘した。