炭を熱源に秋田の山桜の原木で燻煙するこだわりの手作り燻製商品が人気

いろりで大根を燻して作る秋田名物の漬物「いぶりがっこ」。独自の燻す食文化が根付くこの地で、昔ながらの製法にこだわった燻製商品の製造・販売を手がける会社がある。チャコールだ。(取材・文/大沢玲子)

炭を熱源に秋田の山桜の原木で燻煙するこだわりの手作り燻製商品が人気代表取締役・長浜谷聡氏

 商品ラインナップは、秋田名物のハタハタや比内地鶏など地元産の魚や肉を使ったものから、チーズや卵、豆腐などまで幅広い。「ワインやビール、日本酒に合わせたギフト用の詰め合わせが好評で、リピーターのお客さまも増えています」。代表取締役の長浜谷聡氏はそう語る。

 長浜谷氏が、17年間勤務した地元の電子部品製造会社を辞め、同社を創業したのは2010年のこと。会社員だった02年、「趣味の一環で、『自分好みの味付けで、おいしいベーコンを作りたい』と自宅の庭で挑戦したのが独立の契機となりました」と明かす。

 市販の金属製の燻製器から始め、ブロックを積み上げ自作した燻製器を経て、ホームセンターで購入した木材で作った木製の燻製器が完成した07年あたりからは「多種類の食材を使っても、毎回失敗せずに同じ仕上がりの燻製ができるようになりました」(長浜谷氏)。その頃から燻製専門店を起業したいと考えていたところに、リーマンショックの影響で、会社の業績がダウン。行く末も不透明感がある中、初期費用は退職金の範囲内と決め、製造工房と販売店舗を合わせて約8坪の中古のプレハブからスタートする。

炭の遠赤外線効果で
しっとり食感を実現

炭を熱源に秋田の山桜の原木で燻煙するこだわりの手作り燻製商品が人気オリジナルの木製の燻製器。炭のみを熱源に地元の山桜の原木を使って燻す

 今のようにおつまみ用の燻製商品が多く流通していない時代にあって、創業初期は認知度アップに苦労するが、手作りの燻製のおいしさとネット販売を基軸とする販売戦略が当たり、じわじわとファンが増えていく。16年には新工場を構え、22年11月には法人化を果たした。

 堅調に業績を伸ばした要因は大きく二つ。一つ目は昔ながらの製法へのこだわりだ。業務用の燻製は一般的に電気やガスを使用するが、同社では炭を熱源に地元の山桜の原木で燻煙。食材の特徴に合わせて煙の温度を徹底管理し、生の食材から加熱している。「炭の遠赤外線効果と原木から出る柔らかな煙でじっくり燻すため、しっとり軟らかい食感が特徴です」と長浜谷氏。むろん、保存料や着色剤などの添加物は使用せず、仕込みの味付けから燻製まで、長浜谷氏の手作りだ。