人民元の下落が止まらない!中国経済を世界の投資家が不安視するこれだけの理由共産党政権は推計方法の改善を理由に、若年層の調査失業率の公表を一時中止すると発表。「公表できないほど中国経済は悪化し、かなり厳しい状況に追い込まれている」との見方が広まった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

人民元の下落が止まらない。一部では「年末までにさらに下落し、歴史的安値になる」との観測も。中国人民銀行は、為替介入などで対策しているものの、今のところ目立った効果はない。8月、共産党政権は推計方法の改善を理由に、若年層の失業率の公表を一時中止したが、「公表できないほど中国経済は悪化している」との見方が広まった。中国経済の構造問題を、世界の投資家はシビアに見ている。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国・人民元の下落に歯止めがかからない

 8月以降、人民元の下落に歯止めがかからない。中央銀行である中国人民銀行は、為替介入などで人民元安に歯止めをかけようとしているものの、今のところ目立った効果はない。共産党政権が人民元安を食い止める姿勢は強いとの見方がある一方、足元では海外投資家の売りによって人民元に先安観があり、不安定さは払拭できていない。

 人民元下落の背景には、中国経済の閉塞感が日増しに強くなっていることがある。中国経済の高成長を支えたメカニズム(経済構造)は限界を迎えている。不動産バブルは崩壊に向かいつつあり、それに伴い、高金利の信託商品や理財商品のデフォルト懸念が上昇している。

 また、半導体分野における米中対立や地政学リスクの上昇、人件費上昇など複数の要因が絡み合い、中国が誇った「世界の工場」としての地位は低下した。

 習近平政権は、何よりもまず不良債権処理を進める必要があるはずだが、今のところ、当該分野での進展は限定的だ。これでは、成長期待の高い分野にヒト・モノ・カネをうまく回すことは難しい。習政権にとって、中国経済の構造問題を解決に向かわせることが喫緊の課題であり、何よりそのスピード感が求められる。今後の展開次第では、人民元の下落が一段と進み、中国発の世界的なリスクオフが進むことも考えられる。