厳しい処分を下せない
仕組みにも問題あり

 真っ赤に染まった埼玉スタジアムのゴール裏が作り出す壮大な雰囲気は、Jリーグが産声を上げた1993年以降の30年間で、浦和が地元との間で育んできた財産と言っていい。こうした事情を踏まえた上で、乱入事案の背景にあるクラブとサポーターの特殊な関係を問う質問も飛んだ。

――浦和というクラブはサポーターの顔色をうかがうというか、甘いというか、逆に言えばサポーターの方がクラブよりも上にいる、という関係性をすごく感じる。クラブとして、ゴール裏の中心である彼らとの向き合い方をどのように変えるのか。正直、いまこそ膿(うみ)を出すいい機会ではないか、とも感じている。そういった声は、クラブのなかで上がっているのか。

 これには田口社長ではなくオンライン会見に同席した、試合運営およびファン・サポーター対応を管轄する、競技運営部門の総責任者でもある須藤伸樹マーケティング本部長が答えている。

「クラブとサポーターは対等で、お互いに高め合っていく関係のもとでやってきました。何か問題が起こればまず対話して、お互いに納得して、その上で処分を受け入れてきたなかで、みなさんの目にはそう(対等に)見えていないというのは、われわれの力不足と言うしかないと思っています」

 須藤本部長を補足するように、田口社長が再び「排除」という概念を否定した。

「チームにメリットのないことをする方々は、ファンでもサポーターでもないと私は考えています。しかし、そういった方々を『お引き取りください』と排除する上で、そういった法的な根拠がない。そこでどのようにしていくのかが、非常に難しい課題だと思っています」

 こうしたやりとりから見る限りは、田口社長が言及したように、一部サポーターの先鋭的な意識とクラブ側の甘い姿勢の両方に問題があり、数々の事案が引き起こされてきたと言わざるを得ない。

 JFAが17人に科した入場禁止処分に話を戻せば、彼らが永久追放ではなく、いつでも解除可能な無期限とされた点に、サッカーファンや他クラブのサポーターから批判が殺到した。

 今回の臨時理事会はJFAが定める試合運営管理規定のもとで議論が行われた。しかし、同規定のもとで科される処分のなかで、最も重たいものが「無期限入場禁止」だった。つまり「永久追放」を科そうにも、現状の試合運営管理規定では根拠が存在しなかったことになる。