飲みやすい梅エキス「ミサトール」を基点に地元の特産品・梅の付加価値創造を目指す

和歌山県に次いで全国2位の梅の生産量を誇る群馬県。地元の特産品・梅に着目し、科学的根拠に基づいた付加価値創造に向け、梅に特化した研究開発や製品製造を手がけるバイオベンチャーがある。群馬県高崎市のAdaBio(アダバイオ)だ。(取材・文/大沢玲子)

飲みやすい梅エキス「ミサトール」を基点に地元の特産品・梅の付加価値創造を目指す代表取締役社長・足立太郎氏

 高崎市は、群馬三大梅林に数えられる榛名・箕郷地区を擁する県内でも有数の梅の生産地。だが近年は、価格の低迷や高齢化による後継者不足などを背景に耕作放棄地が増加。梅産業の活性化に向け、「創業者である現会長が梅農家の方々から相談を受けたのが、研究に着手する契機となりました」。現在、代表取締役社長を務める足立太郎氏はそう振り返る。

 同社は会長をはじめ、がんなどの難病治療の研究に従事していたメンバーを中心に2002年に創業。長年、研究畑を歩んできた経験を基に、着目したのが古くから地元の農家で梅を煮詰めて作られてきた「梅エキス」だ。

 梅エキスは江戸時代より民間薬として重用されたといわれ、食品としてさまざまな健康効果が報告されている。だが、科学的なメカニズムは未知の部分が多い。同社では箕郷町の梅から梅エキスを作り、研究を推進。梅の効能を解明する糸口を得て、03年、箕郷町の梅を使った梅エキス「ミサトール」を発売する。

梅の研究で国内8件、
海外3件の特許取得

 さらに、さまざまな角度から梅に関する研究を続け、梅干しや梅ジュースには含まれない「新規のクエン酸誘導体」を発見。同新規物質の物質特許を含め、合計で国内8件、海外3件8カ国で特許を取得。「学術誌での研究報告も、現在では24報を発表しています」(足立氏)。