梅の研究にまい進する同社が、当初発売した梅エキスに改良を重ね、04年に発売したのがサプリメントタイプのミサトールだ。従来の「酸っぱ過ぎて続けにくい」印象が強かった梅エキスを飲みやすいシロップ状飲料に加工。個包装で一定量を摂取しやすく、そのままでも、水や炭酸に溶いても梅ジュース感覚で飲める。成分には体内を酸性から弱アルカリ性へと戻す効果があるクエン酸の他、リンゴ酸、梅エキスだけの有用成分「ムメフラール」が豊富に含まれている。
医師の提案で梅を使った
鼻用洗浄器・洗浄剤も開発
ペット用の「ミサトールGV」の他、09年には梅エキスを活用した一般医療機器である、鼻用洗浄器・洗浄剤「ミサトール リノローション」も発売した。
開発の基点となったのは、上咽頭炎の治療に携わる医師の提案だった。鼻腔の後方にある上咽頭は外気の通り道として細菌などがたまりやすく、慢性的な炎症を起こすと、さまざまな体の不調につながるリスクが指摘される。同製品は、上咽頭を梅エキスを使用した洗浄液でケアするもので、手洗いやうがい感覚で手軽に使用できるのがポイントだ。
●AdaBio株式会社 事業内容/梅に関わる製品(食品、医療機器、ペットフードなど)の製造販売、従業員数/14人、売上高/8300万円(2022年度)、所在地/群馬県高崎市剣崎町21‐2、電話/027‐343‐8601、URL/adabio.co.jp
同社の梅の活用はさらに広がりを見せている。15年より箕郷町にある耕作放棄された梅林などを研究梅林として借り入れ、無農薬で群馬の代表品種の「白加賀」「織姫」を栽培。22年5、6月にはひょう被害に遭うも、社員の発案で、「高崎市ブランド商品開発事業補助金」を活用し、傷が付いた梅を使ったジャムを開発し、販売。原料は梅と砂糖のみ。大手ECサイトでも売り上げ上位にランクインし、高崎市のふるさと納税の返礼品にも選ばれた。
19年には群馬県優良企業表彰「ものづくり部門優秀賞」を受賞するなど、注目を集める同社。今後の展開としては化学、薬学、臨床などの専門分野に精通するバックグラウンドを強みに、機能性表示食品の届け出を目指す。さらに大学、医療機関や地域とのパートナーシップの下、「梅の科学的付加価値を確立し、広く世に発信していきたいですね」と足立氏は意気込む。
梅に特化した異色のバイオベンチャーの新たな挑戦に期待したい。
(「しんきん経営情報」2023年10月号掲載、協力/高崎信用金庫)