東電、関電、東京ガス…燃料費下落で利益爆増!営業利益・純利益が「10倍」になった会社は?Photo:PIXTA

新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は東京電力ホールディングス、東京ガスなどの「電力/ガス」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

電力/ガス5社の増収率に陰りも
利益面が「爆増」

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の「電力/ガス」業界5社。対象期間は2023年2~6月期の四半期(5社の対象期間はいずれも23年4~6月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・東京電力ホールディングス
 増収率:5.3%(四半期の売上高1兆6152億円)
・関西電力
 増収率:25.9%(四半期の売上高9666億円)
・中部電力
 増収率:17.2%(四半期の売上高8976億円)
・東京ガス
 増収率:6.5%(四半期の売上高6497億円)
・大阪ガス
 増収率:9.7%(四半期の売上高5126億円)

 電力/ガス業界の5社は、いずれも増収だった。

 ただし、昨今は燃料・原料価格が下落していることから、過去の四半期に見られた約5~7割という大幅な増収率は落ち着きを見せた。

 というのも、電力/ガス業界では22年以降、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で燃料・原料価格が高騰。調達コストが急上昇していた。

 各社は増加したコストを吸収するべく、燃料・原料価格の上昇分を電気・ガス料金に転嫁した。従来の大幅増収の要因は、この値上げによるところが大きかったのだ。だが23年4~6月期はその効果が薄れたといえる。

 また、電力・ガス会社に適用される、燃料・原料費の変動分を料金に自動転嫁する制度(※)には、需要家(消費者・企業など)保護の観点から上限額が定められている。燃料・原料費の増加が一定の水準に達すると、企業側はそれ以上、料金への上乗せができなくなり、差額を自社で負担する必要性が生じるのだ。

※電力業界の燃料費調整制度、ガス業界の原料費調整制度

 その影響もあって、電力/ガス業界5社はこれまで大幅増収が続いていた半面、利益面では苦戦するケースが多かった。

 一方、23年4~6月期は燃料・原料価格の下落によって調達コストが減少したことで、5社の利益面は大幅に回復・伸長した。その中には、営業利益が前年同期と比べて約10倍になった企業も存在する。純利益が約10倍になった企業もある。

 それらの企業はどこなのか。次ページ以降では各社の増収率の推移と併せて、利益面について詳しく解説する。