コンプライアンスオフィサーの設置義務の緩和、複数の運用会社によるバックオフィス業務の共通化なども検討されるようだ。「やはり過剰装備だったか」との感を深くするが、これも全国共通の恒久措置として規制緩和するといい。

 基準価額の二重計算用のシステムにスタッフのコスト、コンプライアンスに関する過剰な要求などは、結果的に、日本でブティック型の運用会社を立ち上げようとする人々に対して、やる気を阻害する参入障壁として機能してきた。日本で独自性のある運用会社が育ちにくかった大きな原因の一つだ。

「特区に来てくださる外国人様」に
絶対やってはいけないことがある

 一方、「特区に来てくださる外国人様」の住居などの環境を考えてあげることまでは親切の範囲として構わないとしても、所得税その他の税金面での優遇措置は絶対にやるべきではない。税の公平性は国家の根幹に関わる問題だ。違法行為なので「暴動を起こせ」とは言わないが、国民は、違法でない範囲で最大限の反対を表明すべきだろう。

 外国人運用者に「特別な運用ノウハウ」などない。ただ、口がうまくて、ビジネスが様になっているだけなのだ(このビジネスでは、そこが、あるいはそこだけが、極めて大事なのだが)。

 日本の行政はこれまで、証券系、銀行系、保険系など監督者の言うことを聞かせやすい会社の子会社を中心に、率直に言って似たような運用会社ばかりを育ててきた。彼らの話を聞いても退屈なのは分からないでもない。

 外資系の運用会社を呼び込むと、表面上は、短期間のうちに運用ビジネスにバラエティーができたような印象を持てるようになるかもしれない。だが、彼らの提供する運用商品・サービスは、大半が国民の資産形成にとってどうでもいい代物だろう。

 わが国が、個人金融資産や日本企業の潜在力を背景に、「資産運用立国」を目指すなら、まずは日本国内で運用業に新規参入が起こる状態をつくりつつ、日本の運用会社を育てることを考えるべきだろう。その中に、外国資本の会社があってもいいというのが、普通の姿だろう。外資優遇から始めようというのは常軌を逸している。

 岸田首相の「資産運用特区」構想は、根本的な勘違いに基づいている。絶望的な落第点というしかない。