タマゴ高騰中に親子丼40円値下げ、なか卯「逆バリ価格戦略」は成功したのか?※親子丼の価格は撮影当時のものです Photo:Koshiro Kiyota/gettyimages

2022年から世間をにぎわせている「エッグショック」。鳥インフルエンザの流行を背景に供給が間に合わず、卵の価格が長らく高騰している。そんな最中、23年4月に大手飲食チェーンの「なか卯」が看板商品の親子丼を40円値下げし、大きな話題となった。原価が高騰する中での思い切った値下げ戦略だが、果たして価格設定は妥当だったのか。独自調査からひもとく。(プライシングスタジオ代表取締役 高橋嘉尋)

世間も「まさか!」
なか卯が卵高騰中に「親子丼値下げ」

 2022年10月、国内で過去最速となる鳥インフルエンザの流行が確認されて以降、卵の価格高騰が止まらない。23年に入ってからも高値の傾向は続いており、月によっては昨年同月比でおよそ1.9倍にも迫る急騰ぶりを見せている。

タマゴ高騰中に親子丼40円値下げ、なか卯「逆バリ価格戦略」は成功したのか?鶏卵相場の推移(出典:JA全農たまごの公式サイト
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 高値がピークに達した23年4月、一件のニュースが世間をにぎわせた。丼物・うどんの大手チェーン「なか卯」が、看板メニューである「親子丼」の値下げに踏み切ったのだ。親子丼が卵をふんだんに使用することは言うまでもない。

 当時、価格改定の対象になったのはこの親子丼のみ。サイズによらず一律40円の引き下げが発表され、例えば並盛は490円から450円へと改められた。

「JA全農たまご」によれば、この月の東京における卵の卸売市場の相場価格は1kg350円。前年同月の211円と比較すると実に140円近くも値上がりしている。過熱するエッグショックが家計を直撃するなかでの値下げ発表は、世間に大きな驚きをもって迎えられた。

 この絶妙なタイミングでの値下げには、経営上のさまざまな戦略が見え隠れするが、果たして値下げの判断、そして値下げ幅の設定に妥当性はあったのだろうか。プライシングの観点から分析してみよう。