昨年、安倍晋三元首相が凶弾に倒れたことで、一気に社会問題化した旧統一教会(世界平和統一家庭連合)。特集『巨大宗教 連鎖没落』(全20回)#2では、同教団追及に孤軍奮闘してきた鈴木エイト氏に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部特別取材班)
政治家たちの庇護によって
旧統一は取り締まりから免れた
――まず、日本の政治に韓国の宗教団体である旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が食い込んでいった背景から教えてください。
日本進出は1958年で、今年、97歳で亡くなった西川勝(崔翔翊)氏が、旧統一教会を設立した文鮮明氏の命を受けて宣教師として密入国してきたことに始まります。
鈴木エイト 著
そして64~67年、安倍晋三元首相の祖父、岸信介内閣当時の首相公邸だった建物に旧統一教会が本部教会を移したことで政治との接点が生まれました。68年、旧統一教会を母体とする反共産主義の政治団体「国際勝共連合」の創設に岸元首相が深く関わった結果、自民党安倍派(清和政策研究会)を中心に多くの政治家たちを取り込むことに成功します。
その一方で、教団内部資料によれば、すでに70年代から文氏の指示による霊感商法が始まっていて、確かに宗教団体ではあるけれど、その実態は、政治団体、経済団体、関連企業の一大コングロマリットと見てよいでしょう。ただ90年代、東西冷戦の終結で保守派の政治家に旧統一教会と付き合うメリットが薄れ、教団に言わせれば、政治家対策を怠っていた2007~10年に霊感商法の関連会社が立て続けに摘発される事態にまでなりました。
冷戦後の旧統一教会側はいかにして自分たちが政治家に必要とされるかを模索した結果、それまでの反共産主義から、LGBTへの理解増進や男女共同参画、夫婦別姓の推進は全て共産主義、教団の言う「文化共産主義」なのだとする主張を始め、冷戦後の保守派の政治家にうまく擦り寄るようになったのです。
この間も霊感商法や合同結婚式は相変わらずで、正体と目的を隠した偽装勧誘も続いていました。なぜ、こうした教団が規制されず当局の取り締まりも免れたのかというと、結局は時代、時代の有力政治家の庇護を受けてきたからだといえます。
――旧統一教会はその信者数に見合わず、政治家の懐柔に長けていると思います。他の宗教団体との違いはどこにありますか。