保険ラボ

好調な外貨建て保険に金融庁が注視
全銀協と共に対応を行う

――販売量が増加している外貨建て保険について金融庁が注視しています。

 金融機関の窓販における外貨建て保険の販売は、米国を中心にした世界的な金利上昇で利回りが魅力的になりました。また、為替が円安に振れたことで利益が出るという期待感があります。この二つが要因となって、昨年下期あたりから外貨建て保険が活況を呈しています。その結果、新契約が増大しているのに加え、積立金が一定の目標額に達すると確定する商品もあることから、利益確定による解約が増えています。つまり、新契約と解約ともに取引量が増えているのが昨年下期からの流れです。

 2019年前後のような苦情など大きな問題は出ていませんが、金融庁のモニタリングレポートには厳しい言葉が書かれています。「金融機関での外貨建て保険の販売には注視し、正すべきは正していく」というものです。売り手側の金融機関、商品を供給する保険会社、どちらかの責任ではなく共同責任であるという金融庁の指摘であり、苦情などには全国銀行協会とともに共同で対応していかなければならないと考えています。

日本生命,清水博しみず・ひろし/1961年1月生まれ。83年京都大学理学部卒業、同年4月日本生命保険入社。2009年3月執行役員。12年3月常務執行役員。13年7月取締役常務執行役員。14年7月常務執行役員。16年3月、専務執行役員。同年7月取締役専務執行役員。18年4月に社長就任。19年7月生命保険協会長。23年7月に2度目の生保協会長に就任。 Photo by Yoshihisa Wada

――前回の協会長時には外貨建て保険の資格制度を導入しました。

 振り返ってみると、4年前に協会長を務めた19年度が銀行窓販での苦情のピークでした。その前後から、適合性の原則を踏まえた加入を行っているか、必要な説明を尽くしているか、また説明資料の記載を増やすなど、さまざまな対応を行ってきました。そしてアフターフォローを銀行が行うことで、お客さまに状況を常に確認していただくわけですが、そのサポートを保険会社が担っています。それらを全て行うための資質として、外貨建て保険の資格制度を導入しました。

 幸いなことに、19年度をピークに苦情は減っていますが、新契約と解約増の状況を踏まえたときに、苦情が増えないような対応が必要なのは、金融庁の指摘通りです。言われる前から業界としてやっていかねばなりません。その認識のもとで生保協会としては、全銀協と協力して対応していきいたと考えています。

――金融庁は銀行と保険会社が互いに責任を押し付けあっているとみているフシもあります。