きわめつきは国際大学の橘川武郎さん(副学長・大学院国際経営学研究科教授)で「この数字をつくってしまったために、例えば天然ガスの2030年の必要量は、5500万トンを下回る、今より2000万トン以上下がることが分かってしまって、これがもう既にブルームバーグの報道とかで世界に衝撃を与えております。中国と韓国に比べて、非常に悪い条件で買わされるということが始まっています」とした。

 なお私は再生エネルギーに反対する立場ではないし、総合的に見て三氏の意見のみが正しいと断言するものでもない。もっといえば文章起案者は日本全体の温室効果ガス削減目標に少しでも近づけようと善意で作成したものだろう。実際にLNG投資に積極的だったため、これ以上の投資をするのか、と批判された商社がある。しかし当面のエネルギー供給のためにはLNGが必要だろうし、調達の観点からすると三氏の意見に頷くところが多い。しかもLNGはタンク内で気化するため現時点では長期保存ができない。

 本来は中長期的な投資を検討させるものとして、将来の電源構成を公表する意味がある。ただし投資には2030年までは短すぎ、単にLNG調達が困難になった可能性がある。

 エネルギー調達関係者で面白いことを発言していた人がいたので引用しておこう。

「ロシアのプーチンがかつて興味深い発言をしていたでしょう。2000年にロシアの新エネルギー戦略として発表した内容ですが、ロシアで2020年までに再生可能エネルギーを活用する、とかね。あれって、ロシアの天然ガスを調達している欧州各国にも再生エネルギーを推進させるきっかけになったと思うんです。しかし深読みできなくはない。つまりプーチンは欧州各国の再生エネルギー政策が失敗すると思って、わざとメッセージを送った可能性です。そんなに簡単に再生エネルギーだけで安定的に充足できるはずはない。技術的にすべてを賄うほど完成していない。再生エネルギーで失敗すれば、結局はスポット需要が高まり、その反動でロシア産の化石燃料エネルギーが高騰するはずだ。プーチンはそれくらいのことを考えていてもおかしくはない」

 なお私は陰謀論や、プーチンがすべてをお見通し論に与しない。しかし、結果としてこの意見に頷かずにはおれない。