LNGの長期契約を自ら捨てた日本は
スポットでの割高購入を強いられる

 カタールに話を戻す。11年前、2012年のカタールのLNG輸出先は次の通りだった(単位:10億立方メートル)。日本(21.3)、インド(16.1)、韓国(14.2)、英国(13.3)、これらが主要なプレイヤーだった。それが2021年にはこのようになっている。韓国(16.1)、インド(13.6)、中国(12.3)、日本(12.3)。日本の存在感は下落している。

 さらに、東京電力と中部電力の合弁会社であるJERAは、カタールから550万トンもの量を調達していたにもかかわらず、2021年にカタールとの長期契約を更新しなかった。これには前述の通り、日本の方針であった非化石燃料の使用拡大の意図、ならびにLNG使用量低下の計画が影響を与えたといわれる。LNGは20年にわたる長期契約がメインだ。先行き不透明ななかでは契約しにくかったのだろう。

 2022年にカタール国エネルギー担当国務大臣であるアル・カアビー氏は、日本で開催された「LNG産消会議」に参加した。その際、カタールが日本の主要供給国ではないので、講演すること自体が「率直に言って少し奇妙に感じる」(ブルームバーグ報道の邦訳による)と語ったという。

 日本の代わりに中国企業が調達すると見られる。2022年にはカタールと中国はLNG史上最大の契約といわれる27年間もの長期契約を結んだ。2026年からの調達を目指す。さらに中国は米国企業とも長期契約を重ねている。中国はLNGだけではなくパイプラインで周辺国から天然ガスを輸入しているから、着々とリスクも分散している。

 さらにLNGをめぐって、欧州は“脱”ロシアのために、アジアは石炭よりは良いからと“脱”炭素のために、それぞれ各国が奪い合っている。二つの“脱”は、なおさら日本をLNGの買い負けに誘う。

 LNGの新規ガス田は数兆円の投資が必要なため、長期契約が必要だ。短期で契約するとリスクが大きい。大半の販売先が決まってから物事が進む。数年後から長期供給を開始できる新規のLNGは、ほぼない。さきにあげた通り、90年代の日本企業とカタールとの契約は長期的視野からだった。もちろん長期契約ではなくスポットでの調達も可能だ。ただ、スポット契約は高価になる。