異次元金融緩和の柱
政府・日銀のアコード
アベノミクスがスタートした直後に策定された政府と日本銀行の共同声明(アコード)は、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という看板を掲げていた。しかし、その実態は日銀に2%の物価目標を掲げさせ、強力な金融緩和を迫るものであった。
日銀はアコードの中で2%の物価安定目標を掲げることになり、アベノミクスが求める金融政策を実現するために黒田東彦日銀総裁が誕生し、日銀による大量の長期国債購入など異次元の金融緩和が始まる。今のアコードは、異次元金融緩和の柱ともなる存在であった。
中央銀行が国債を購入し、金利を低く抑える政策は過去にも例がある。第2次世界大戦中の米国では、戦費調達のための国債発行増に直面したため、米連邦準備理事会(FRB)が国債の買入れを行った。日本でも大陸での戦争が激しくなるにつれて、日銀が国債の引き受けを行うようになった。
もっとも、これらは戦争という非常時に対する対応だ。持続的とはいえ小幅な物価下落に対して、このような金融政策を打ち出すというのは過去に例がないだろう。アコードは、デフレは非常事態であるという政府の認識を日銀にも共有させるためのものであったとも言える。