「レジ袋・ストロー削減」は抜本的な環境対策にならない!経済学的にベストな方法とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

環境汚染は日本を含めた世界中で深刻化。生態系への悪影響が懸念されるマイクロプラスチックの海洋流出や、廃棄物の不法投棄による自然の破壊が起きている。これらの難問に対する適切で効果的な対処法を専門家が解説する。本稿は、有村俊秀・日引 聡『入門 環境経済学―脱炭素時代の課題と最適解 新版』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

マイクロプラスチック排出量の
大部分がアジア由来

 マイクロプラスチックとは、5ミリ以下の微細なプラスチックごみのことをいう。マイクロプラスチックに含有あるいは吸着する化学物質が食物連鎖を通じて、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されており、2015年にドイツで行われたG7首脳宣言において、世界的に重要な課題であることが言及された。

 マイクロプラスチックによる汚染は世界的に広がっている。北太平洋の海鳥の胃や南極海にすむオットセイのフンからマイクロプラスチックが発見され、ウミガメやクジラなど多くの海の生物がマイクロプラスチックやプラスチックごみを誤って食べているという。

 マイクロプラスチックは、一次的マイクロプラスチック、二次的マイクロプラスチックに大別される。

 一次的マイクロプラスチックは、洗顔料や歯磨き粉のスクラブ剤として利用されるマイクロビーズなどのようにマイクロサイズで製造されたプラスチックを指し、下水道などを通じて自然環境に排出される。マイクロプラスチックはボディウォッシュ、シャンプー、マウスウォッシュ、日焼け止め、化粧品などさまざまな製品でも使用されている。

 一次的マイクロプラスチックは、普段接しているプラスチック問題(レジ袋、プラスチック容器など)とは異なり、わたしたちが無意識のうちに使用し、環境汚染にかかわっているものである。非常に小さいため、一旦自然環境に放出されてしまうと回収は困難である。

 このため、米国、フランス、韓国、英国、台湾、ニュージーランド、カナダでは発生源対策として、マイクロビーズを用いた化粧品や洗剤などを対象に、その製品の製造を禁止し、さらには、それらの流通(輸入)を禁止している。日本においては、日本化粧品工業連合会が2016年3月に会員企業に自主規制を呼び掛けているが、実効性のある法規制は導入されていない。

 二次的マイクロプラスチックは、環境中に排出されたプラスチック容器などが、紫外線や外的な力で徐々に劣化して小さくなったプラスチックをいう。

 環境省によると、陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量は2010年の年間推計で、中国が最も多く353万トン、次いでインドネシア129万トン、フィリピン75万トン、ベトナム73万トン、スリランカ64万トンの順となっている。なお、米国が11万トンで20位、日本が6万トンで30位となっている。

 世界の海に流出するプラスチックごみは2010年において480万~1270万トンと推計されており、世界全体の排出量の大部分がアジアに起因していることがわかる。

 マイクロプラスチックの海洋流出対策として、バイオプラスチック(バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称)の普及が検討されている。バイオマスプラスチックはトウモロコシ、サトウキビ、大豆などの再生可能な有機資源を原料として製造され、二酸化炭素などの排出削減に貢献できるというメリットがある。

 生分解性プラスチックの場合、微生物の働きによって、最終的には水と二酸化炭素に分解され無害化するというメリットがあるが、海洋に排出されると、分解までに長期間かかるため、マイクロプラスチック問題と同様の問題になってしまう懸念がある。

プラスチック廃棄物の削減を目指す
新法の実効性は疑問

 2022年4月に、プラスチックを使用する製品を対象に、資源循環の取り組みを推進するために「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された。この法律の下でストロー、フォークなど「特定プラスチック使用製品」12品目を年5トン以上使用する事業者に削減が義務付けられた。

 例えば、飲食店やコンビニ、スーパーなどの店頭で配られているストロー、スプーン。ホテルで提供されているヘアブラシ、歯ブラシ、かみそり。洗濯業などで使われている衣料用のハンガーなどの削減が求められることになった。

 日本経済新聞によると、王将フードサービスのように持ち帰り用のスプーンなどを有料化することで、プラスチック削減に取り組む企業が出現している。

 また、植物系素材を25%配合したスプーンに変更したり(外食チェーンのリンガーハット)、ホテルの部屋に設置する歯ブラシなどを竹や木製に変える(帝国ホテル)など、素材変更で対応したり、ファミリーマートのようにフォークなどの提供自体を廃止する企業が出現しているという。

 いっぽう、今回の施策で削減対象となるプラスチック製品の国内流通量は日本全体のプラスチック排出量の1%程度にすぎないという。このため、より実効性のある政策にするためには、対象を広げていくことが今後の課題となる。

 とくに、二次的マイクロプラスチックは、プラスチックが劣化する前の段階で、散乱を防ぎ収集することで問題を回避できる。このため、可能な限りデポジット制度の導入を検討することで問題解決の一助になると考えられる。

 不法投棄の防止などに有効なデポジット制度は、さまざまな廃棄物に対して適用可能であり、日本でも実際に、さまざまな地域で導入されている。