たとえば空き缶デポジット制度の場合、缶飲料の価格にある一定の金額(これをデポジット[預託金]と呼ぶ)を上乗せして販売し、消費者が空き缶を回収機や販売店に戻したとき、デポジットの全額やその一部を受け取れるように制度設計される。

 外国の導入事例を見ると米国やヨーロッパでは、飲料容器などを対象にしたデポジット制度が導入されている。韓国では、飲料容器のほか、酒類・化粧品容器、電池、タイヤ、潤滑油、テレビ、洗濯機、エアコンなどを対象に導入されている。

 家庭から排出されるガスボンベなどの適正処理が困難な廃棄物や、乾電池などの有害廃棄物が普通ごみに混入することで、処理の過程で環境汚染や事故が起きている。この場合、個々の廃棄物に対して個別にデポジット制度を実施することで、さまざまな問題を解決することができる。

 空き缶やビールびん、乾電池などに幅広くデポジット制度を導入することは、不法投棄の解決に大きく役立つだろう。

 ただし、空き缶に対するデポジット制度のように、特定の地域のみで実施する場合(ローカルデポジットと呼ぶ)には、デポジット制度が実施されていない地域で購入された製品やその廃棄物の扱いをめぐり問題が生じる可能性がある。

 第1は、デポジット制度が実施されていない地域で購入された製品が、制度の実施地域で消費あるいは使用され、その後に廃棄物として回収拠点にもちこまれたとしても、お金が支払われない場合に生じる問題である。

 この場合、それらの廃棄物を回収拠点にもちこむインセンティブが生じないので、不法投棄や普通ごみなどへの混入を防止することができない。

 この問題を解消するためには、デポジット制度が実施されていない地域で購入された製品の廃棄物がデポジットの回収拠点にもちこまれた場合でも、お金を支払えばよいかもしれない。しかし、デポジット制度が実施されていない地域での製品の販売価格は、預託金がない分だけ安くなるので、その地域で購入した製品の廃棄物を、デポジット制度が実施されている地域の回収拠点にもちこむケースが増加するだろう。

 この結果、不法投棄などによる環境汚染は生じないが、デポジット制実施地域内の製品の販売を過度に抑制し、地域内への廃棄物の流入を過度に促進させる問題が生じる。また、もちこまれた廃棄物に対する支払いの財源不足も生じる。これが第2の問題である。