異例?なぜ李氏の訃報は即座に伝えられたのか

 本来、前首相でもある李氏の死は、中国共産党最高指導部の許可を得た訃報という形で公開されることが通常だ。しかし、他の高齢の高級幹部と違って、まだ若い60代の李氏に対してはその死後に使われる訃報の予備案は事前に用意されていなかった。

 一方、権力闘争による陰謀論が巻き起こらないように、当局は一刻も早く情報を公開した方が国民からの理解を得やすいとの判断で、李氏の死をほぼリアルタイムに公開することに踏み切ったようだ。

 こういう作業の中で、鳳凰網の報道は勇み足だったのではないかと思われる。その報道の日時の表示は素早く修正されたこともあり、中国国内であまり議論を巻き起こさなかった。国民もその辺の事情と処理過程における勇み足だったことを理解していると思う。

 李氏のあまりにも早すぎた死に対して、中国国民は政府が主催する正式な追悼活動を待たずに、自らの手で李氏の冥福を祈り始めた。李氏の遺体が北京に到着したとき、遺体を載せた車列が通過すると、多くの北京市民は携帯電話でその瞬間を撮影した。SNSには、以下のような投稿もあった。

「昨日の夕方は本当に感動的だった!万泉河橋に立って西を見ると、四環路の交通管制で多くの車が止まっていた。空と大地の下で夕日に照らされた緋色のテールライトが続き、誰もが静かに待っていた。空港から走ってきた車列が四環路に入った瞬間、無数の車が一斉にサイレンを鳴らしだした。この場面を見た私も男泣きした」