電球とTカードPhoto:Jonathan Kitchen/gettyimages

日本初の共通ポイントであるTポイントは、レンタルビデオチェーン、TSUTAYAで飛躍したカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)によって生み出された。Tポイントの「生みの親」である当時のCCC首脳がポイント共通化の着想を得たのは、23年前のある出来事がきっかけだった。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#3では、時計の針を2000年に戻し、巨大なポイントビジネスの萌芽にまつわる秘話をひもとく。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

「TSUTAYA」のCCCが上場
ビデオレンタル業で急成長

 20世紀最後の年である2000年。新たな世紀を控え、「ミレニアム婚」や「ミレニアムベビー」といった言葉がはやり、世の中は沸いていた。

 まさに時代の変わり目のこの年、レンタルビデオチェーン「TSUTAYA」で躍進していたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は転機を迎えることになる。

 2000年4月26日、CCCは東京証券取引所マザーズ(当時)に上場を果たした。同日午後に東証で記者会見した社長の増田宗昭は「(TSUTAYAの)出店のポテンシャルは3000店ある」と、当時の店舗数を3倍にするとの構想をぶち上げた。

 CCCの創業は1983年にさかのぼる。アパレル企業の鈴屋(1997年に破綻)に勤めていた増田が大阪・枚方に開業した蔦屋書店が源流だ。増田は当時1本1万円以上もする高額品のビデオに着目し、書籍やレコードの取り扱いに加え、ビデオのレンタル業を始めたのだ。

 その2年後に増田はCCCを設立した。資本金100万円ほどの小さな会社を立ち上げた理由は、ビデオレンタルのフランチャイズビジネス(FC)を展開するためだ。CCCのFCビジネスの仕組みは、加盟店に「TSUTAYA」のブランド利用を認め、対価として売上高の5%の手数料を受け取るというものだった。

 当初は苦戦が続いた。文字通り増田の「個人商店」で会社組織には程遠かったからだ。それでも、レンタル市場が持つポテンシャルがCCCの成長を後押しすることになる。80年代は家庭用ビデオデッキが広まり、レンタルビデオのニーズが爆発的に高まった。

TSUTAYAPhoto:Bloomberg/gettyimages

 ビデオレンタル業がまだ成長を続けていた1995年に大ばくちに打って出る。CCCは三菱商事などと組んで衛星放送事業「ディレクTV」に参入したのだ。

 だが、経営は混乱し、1998年にディレクTV社長の増田が株主から解任されるという結末に終わる。創業から上場までに時間を要したのもこのためだ。

 回り道をしたものの、本業であるビデオレンタル事業への成長期待は高かった。業界では中小の事業者が淘汰され、CCCとライバルのゲオ(現ゲオホールディングス)の2強による寡占化が進んだ。増田が大風呂敷を広げたのも、ビジネスモデルに対する強い自信の表れだったといえる。

 冒頭、CCCにとって2000年は転機だったと記した。しかし、それは上場を果たした年だったからではない。この年こそ、当時は概念すら存在しなかった共通ポイントの輪郭がおぼろげながら浮かび上がったタイミングだったのだ。

 それから20年後には、共通ポイントは数十兆円もの消費にひも付く巨大なビジネスに化けた。実は、Tポイント誕生の背景には、CCCが当時抱えていた大きな経営課題の存在があった。日本初の共通ポイントはどのように着想されたのか。知られざる物語を明らかにしていく。