共通ポイント20年戦争

日本初の共通ポイント、Tポイントと後発の楽天ポイントは激しくしのぎを削っていた。北陸のスーパー、大阪屋ショップとホームセンター大手のコーナン商事を巡る争奪戦では楽天ポイントに軍配が上がった。両者の3番勝負の舞台となったのが、沖縄県でスーパーを展開する金秀商事である。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#31では、勝敗相半ばする激しい攻防戦の舞台裏を明かす。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

Tポイントvs楽天ポイント
沖縄のスーパーで直接対決

 2015年5月18日、楽天ポイントの指揮を執る笠原和彦が足を運んだのが、沖縄県でスーパー、タウンプラザかねひでを展開する金秀商事を傘下に持つ金秀本社(現金秀ホールディングス)である。鉄工所を祖業とする金秀本社は、小売業や観光業なども手掛ける沖縄県を代表するコングロマリットである。

 笠原とその金秀商事との縁はまだカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)でTポイントの事業責任者だった6年前の09年にさかのぼる。当時、金秀本社は運営していた高級ホテル「喜瀬別邸ホテル&スパ」を、ザ・リッツ・カールトン沖縄にリブランドしようとしていた。笠原は隣接するゴルフコース、かねひで喜瀬カントリークラブの「試打会」に招かれたのだ。笠原はそれをきっかけにTポイントへの参画を呼びかけたが、結局導入には至らなかった。

 今度は楽天ポイントの責任者の立場として笠原が面会したのが、金秀本社の経営企画部長だった奥平太一である。笠原の説明に奥平は熱心に耳を傾けていた。しかし、やりとりの中で笠原は違和感を覚える。奥平が共通ポイントについてやたら詳しいのだ。何度も営業に訪れたが、最初から担当者の理解が深いケースはほとんどない。

 翌月に再び笠原は奥平の元を訪れ、こう説明した。「50万人をお店に送客できますよ」。当時、沖縄県内に楽天会員は50万人もいたのだ。数字に驚いた奥平は、笠原に申し訳なさそうにこう打ち明ける。「実は、Tポイントの導入を検討しているんですよ」。奥平はTポイント側からすでに熱心なアプローチを受けていたのだ。詳しいのも当然である。

 金秀商事に最初にTポイントで営業をかけたのは当の笠原である。それを引き継いで営業をかけていたのが、CCC傘下のTポイント運営会社の営業部長だった滝口彰である。

 笠原と、CCC時代に部下だった滝口は、北陸のスーパー、大阪屋ショップとホームセンター大手のコーナン商事でも相まみえていた。金秀商事が、元上司と部下の3番勝負の舞台となったのだ。