──どういう商品ですか?
齋藤 羅布麻(らふま)を使った商品です。羅布麻は中国に自生している植物で、天然成分では珍しく、35度で反応する遠赤外線作用と強い抗菌性を持っています。ただ硬くて切れやすい短所があり、商品化が難しいとされていました。「羅布麻と綿の混紡糸が大量にあるので、有効活用できないか」と県の技術支援センターから相談を受けたことから、挑戦したのです。
今まで積み重ねた織りの技術と知恵によって行き着いたのが、経(たて)糸に絹糸、緯(よこ)糸に羅布麻と綿の混紡糸とポリウレタン糸を使って織り上げること。さらに生地を精練して約9分の1の大きさに縮ませることで、羅布麻の遠赤外線作用と抗菌性に加え、絹の柔らかさや通気性のよさ、伸縮性の高さなどを併せ持つ生地が完成しました。伸縮する生地はたくさんありますが、織物では珍しいのです。
この生地で膝や肘などのインナーサポーターを作り、初めて出展した東京の百貨店の物産展で、大変ご好評を頂きました。それから他の物産展でも販売できるようになったのです。「締め付け感がないし、ずれないし、蒸れない。でも芯が温まって関節の痛みが和らぐようだ」と評価されています。
──まさに長く愛される商品ですね。
齋藤 他にも、07年に開発した「ミラクルロールマスク」は、新型コロナウイルスが流行した20年に、新発売した「さわやか羅布麻マスク」と合わせて、例年の100倍の売り上げがありました。また、08年には富岡産のシルクと羅布麻を編み合わせた「ミラクルロールプラチナ」を開発し、富岡製糸場内で販売を開始。世界遺産に登録されてから、多くのお客さまにお買い求めいただいています。
──近年は順調なご様子ですね。
齋藤 11年に東日本大震災がありましたが、弊社工場に大きな損害はなく、ミラクルロールを精練する機械を特注するなどの設備投資をしました。
●齋藤産業有限会社 事業内容/織物製造販売業、従業員数/7人(社長含む)、所在地/福島県伊達郡川俣町新中町60、電話/024-565-2675、URL/saito-sangyo.com
資金面でお世話になったのは福島信用金庫さんです。信金さんは私が覚えているだけでも1950年代からのお付き合い。下請けからの脱却を図ってからも親身になって支えていただきました。融資だけでなく展示会への出展や記事掲載などを何回もご提案いただき、本当に助かっています。
──今後の抱負をお聞かせください。
齋藤 84歳になりましたが、新作の生地が22年のテキスタイル・コンテストで準グランプリを頂き、創作意欲は尽きません。ミラクルロールの売り場に行くと、どこでも「この商品があって助かった」とお客さまにおっしゃっていただけます。そういった方を増やしていけるような商品をこれからも作っていきたいですね。
(取材・文/杉山直隆、協力/福島信用金庫、「しんきん経営情報」2023年12月号掲載)