米大統領補佐官も務めたヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が、29日に死去した。100歳だった。同氏は米国史上最も影響力があり、かつ評価の分かれる外交官の1人として知られていた。 ドイツ生まれのキッシンジャー氏は、米史上で唯一国務長官と国家安全保障担当の大統領補佐官を兼任したことで知られ、ニクソン政権やフォード政権では絶大な権力を持っていた。これがベトナム戦争の終結や、冷戦の真っただ中で旧ソ連に対する米国の外交政策を形成する支えにもなった。 キッシンジャー氏は外交面での成果を挙げたことで、核兵器を使った最終戦争を恐れ、戦争で疲弊していた米国民の英雄となった。一方、国外で行われた残虐行為の責任を追及する左派だけでなく、共産主義政権との緊張緩和を擁護した同氏に疑念を抱いた右派からも反感を買った。 キッシンジャー氏は1973年に、秘密裏に外交協議を進めてパリ和平協定を成立させた功績により、ベトナムのレ・ドゥク・ト氏と共にノーベル平和賞を受賞。レ・ドゥク・ト氏は平和がまた達成されていないとして受賞を拒否したが、キッシンジャー氏は「謙虚な姿勢」で平和賞を受け取った。だが南ベトナムが2年後に陥落した際には、同氏は賞を返還すると申し出ていた。 ジョン・ケリー氏は米国務長官時の2014年の式典で、キッシンジャー氏は「文字通り、外交政策の第一人者だ」とし、「シャトル外交や戦略的忍耐などといった表現など、現代外交の言葉を生み出した」と述べていた。 キッシンジャー氏が残した功績には、ニクソン政権が1970年代初頭に行った中華人民共和国への秘密裏の働きかけを指揮し、米中間の完全な国交正常化を実現させたことなども含まれる。
キッシンジャー元米国務長官が死去 100歳
有料会員限定
あなたにおすすめ