教育機関を猛烈な勢いでDXしたManabie

1社めはEdTech企業・Quipper(リクルートが買収)共同創業者の本間拓也さんが2019年に創業した会社です。120社超の支援先スタートアップの中で、コロナ禍において最も大きく成長した企業の一つとなりました。Manabieは、創業時からオンラインとオフラインを融合させた次世代モデルの学習塾を東南アジアで展開。そこへ、新型コロナウイルスというゲームチェンジャーが訪れました。日本でも、子どもたちが塾や学校へ通えなくなり、リモート授業をはじめとしたDXニーズが急激に高まりました。

そのような環境下で、東南アジアで培われたケイパビリティを転用し、塾、専門学校、私立学校等に対して、猛烈な勢いでDXを推進しました。日本人創業者のスタートアップとしては珍しく、現在6カ国に拠点をもち、プロダクト開発チームを完全にグローバルでスケールさせています。シリアルアントレプレナーらしい、死角のない盤石なスタートアップ経営です。

コロナ前から10倍の売上高となったTebiki

2社めは、Tebiki。製造業や物流業等の「デスクレスワーカー」向けに動画で現場教育を行うSaaSを提供。2021年11月にシリーズA調達でグロービス・キャピタル・パートナーズから8億円を調達し、累計調達額は11億円になりました。

これまで、工場や物流拠点では、スタッフの動線設計の難しさや、温度や湿度、粉じんといったオペレーション現場特有の問題によって、IT化が阻まれていました。しかし、コロナ禍による強制的な行動変容によって現場環境は一気にオンラインに向かい、現場DXを標ぼうするさまざまなSaaSが勃興しています。そのなかでも、現場ノウハウを動画で可視化するTebikiの売上はコロナ前と比べて10倍の伸びを見せました。長年OJTに頼っていたオペレーション教育は遠隔かつ非同期のモデルへシフトしつつあり、このトレンドを上手く捉えました。大企業との契約を次々と獲得しながらも、解約率0.5%という非常に低い数字を維持したまま成長し続けており、同社のポテンシャルを実感する一年でした。

2022年の投資環境の変化や注目領域・プロダクトについて

Web3の衝撃:インターネットは民主化されるのか

Web3、クリプト、NFT、DAOなどと表現される領域に注目しています。ビジネスチャンスというよりも、1つの社会実験として興味をもっています。GAFAをはじめとする巨大プラットフォーマーに個人情報や著作物を無料でアップロードせざるを得なかった既存のインターネットのパラダイムから、むしろWeb黎明期の頃の理想に近い、中央の管理者を必要としない自律分散型のインターネットへ。Webそのものを大きく民主化させうるという意味で、スマートフォンが出てきた頃のような混沌と高揚を感じます。