この領域における最もわかりやすい分散型アプリケーションとしてビットコインがありますが、その思想は、価値貯蔵の手段の民主化だと表現できるでしょう。通貨に限らず、さまざまな領域で「民主化」を標ぼうするプロダクトの試行錯誤が、海外を中心に進むと思います。しかしながら、中央集権モデルを上回るかたちでシェアを獲得するようなプロダクト、第二のビットコインのような成功事例が他領域で出てくるまでには5〜10年はかかりそうだと考えています。

また、日本でも、ここ最近の経営者同士の会食では、Web3についての話題が必ずあがっているという印象があります。しかしながら、国内投資家の動向という意味では、a16z(アンドリーセン・ホロウィツ)やUnion Square Venturesなどの米国投資家のようなアグレッシブさで、国内VCがこの領域へ投資することは、少なくとも2022年中はないと思います。少しずつお金が流れ始める、というのが現実的でしょう。

その理由の1つ目は、まず、日本のVCの目線に立つと、SaaSやFinTechなどの既存の投資機会と比較して、リスク、リターンの魅力度が劣るから。「すぐ横にもっと魅力的な果実があるのでそちらで十分」と合理的に判断するGPが多いと思われます。理由の2つ目は、税法・金商法等の問題から日本にWeb3スタートアップがほとんど存在しないから。また、海外企業に出資したくともLPとの投資契約上それが難しいベンチャーファンドも多数あります。このような現状において、Web3領域で挑戦したい日本在住の起業家にとっての現実的な解は、海外法人を設立してグローバルでチームを組成することです。残念ながら、これは2022年も同様でしょう。

この領域への投資姿勢をアナウンスしている日本のVCファンドは、gumi Cryptos Capital、B Cryptos、Headline Asiaなどが知られており、また、数件のファンドが水面下では組成準備中のようです。日本でも1つの大きな成功事例をトリガーにして、もっと大規模に資金流入がはじまって社会実験が加速するといいな、と思っています。

2022年に注目すべき投資先

OLTA:資金調達サービスの「クラウドファクタリング」と請求管理ツールの「INVOY(インボイ)」の2つのプロダクトを提供するFinTech企業です。累計調達額は30億円超。コロナ禍で、数十兆円の資金が融資のかたちで中小企業に対して供給されましたが、経営実態と比較して融資額の水準が高止まりするという状況を生み出しました。一方、経済が回復局面に向かうと、突発的な受注を受けた仕入れなど、SMBが運転資金を求めるシーンも増えてきます。