こうした状況下、金融機関は「リスクの高い追加融資を実行できるか?」という命題に直面します。融資以外の選択肢をメニューとして備えるため、OLTAとクラウドファクタリングの提携をしようという地銀の動きが増えています。この流れは2022年以降も続くでしょう。USの類似事例では、Fundboxが2021年にユニコーンの仲間入りをしました。OLTAは日本で15行の銀行と提携し、累計申込金額は600億円を突破。既存金融を“破壊”ではなく“補完”しながらグロースしていく攻め方は、日本型FinTech普及シナリオの王道的な勝ちパターンになりつつあります。

Azoop:トラック運送事業者向けに車両売買プラットフォーム「トラッカーズ」を提供する企業です。既存株主はジャフコなどで、累計調達額は13.7億円。日本では、国内貨物輸送量の90%以上をトラック運送が担っています。大都市から地方都市にいたるまで全国に張り巡らされた物流インフラは、成長するEC市場を支えるという意味でも重要な役割を担ってきました。その一方で、トラック運送業は、ドライバーの高齢化や業務のデジタル化の遅れなども影響し、低い生産性が社会課題となっています。

この課題を解決しようとしているのが、Azoopです。2018年のサービスロンチ以降、営業エリアを関東圏に絞ってきた同社は、2021年には全国1万3000社以上の運送業者と取引するトランコム社や地銀など7社と提携し、サービス提供エリアを全国へ拡大。こうした提携がスムーズに進んだ背景には、同社のサービスが、運送業者が求めるニーズに強く合致(PMF)していることにあります。車両売買プラットフォームの累計出品台数は2021年11月末で1万2500台へ、取引社数も1000社へ飛躍的に伸びています。

カイゴメディア:介護職向け動画メディア開発とマーケティングサービスを提供しています。日本の介護市場は現在11兆円、2025年に15兆円、2040年には26兆円になるとの政府見通しが出ています。2021年は、コロナ禍でのクラスター発生、高齢者の外出自粛などの影響で、介護の現場を支えている介護職や家族の負担が非常に大きかった1年でした。また、介護職不足は根深い社会問題で、2025年には32万人、2040年には69万人が不足すると言われる深刻な状況です。

このような課題が山積する介護領域において、長期的なコミットメントを掲げて創業されたスタートアップです。現在は、全国介護職の約1割にあたる15万人の介護職をカバーする動画メディアを運営。メディア開発を皮切りに、大手小売ベイシアグループとの高齢者向け商品の共同開発などを行い、売上規模は昨対比で3倍成長。今後、厚労省との連携や大手消費財メーカーとの取り組みも予定しており、2022年以降も成長が期待される企業です。