共同創業者で最高情報責任者の内藤さん(内藤研介氏)は、「宮田さんの人生なのだから、それが本当に良い選択だと思っているのであれば引き止めないよ」という感じでした。逆に、COOの倉橋さん(倉橋隆文氏)は「絶対にだめだ」と止めてきました。はたまた、芹澤さんからは、「良いと思うけど、不可逆な意思決定になると思うから、もう少し慎重に考えた方が良いですよ」と言われました。

その後、社外取締役、株主たちとも会話をしました。7月には社内役員たちと合宿に行き、その場で、基本的にはCEOを退任する方向で話を進めるということが決まり、それ以降は「誰に引き継ぐのか」という話を進めていきました。

──7月の時点では「誰に引き継ぐのか」という話はまだなかった。

宮田:具体的にはなかったですが、何となく頭の中に「芹澤さんか、芹澤さんと倉橋さんとの共同CEO体制かな」という考えはありました。

芹澤:さまざまな案を出し切った後に、社外から人材を入れるという選択肢は違うなと考え、僕と倉橋さんの共同CEO体制という案に落ち着いていました。

──社外からCEOを採用するという考えはなかったのですね。

芹澤:なかったですね。

宮田:SmartHRは会社のカルチャーとして、パラシュート人事(外部から優秀な人材を採用し、いきなり要職に置くこと)は避けてきました。例えば、COOの倉橋さんやCFOの玉木さん(玉木諒氏)にも、「CXO候補ではありますが確約はしません」という条件で入社してもらいました(編集注:倉橋氏は楽天の社長室や海外子会社社長を歴任。玉木氏はサムライインキュベートの投資チームマネージャー兼財務責任者だった)。今回も、CEO候補を採用するというかたちは取れたかもしれませんが、その人に最初からCEOを引き継ぐのは違う、という考えはありました。

芹澤:採用においては、カルチャーフィットを最優先にしています。

宮田:そうですね。COO・CFOを採用する時も、経験や能力が申し分ない、たくさんの候補者たちと面接をしました。その中で、最もSmartHRのカルチャーにフィットしそうな倉橋さんと玉木さんを採用したという経緯もあります。

また、CEOが交代した際に社員は何を不安に思うのか。そこはやはり、会社のカルチャーや空気感だと思います。そのため、会社のカルチャーや空気感が変わらず、なおかつより良くできそうな人、という側面を重要視しました。