そして「それぞれが代表になったらどうなるのか、プレゼンテーションしてください」と提案され、次の取締役会でそれぞれ発表しました。正直、「CEOに選ばれたのなら、やりたいな」というくらいに思っていて、「圧倒的なプレゼンスを発揮してポジションを取りに行く」という気持ちではありませんでした。

宮田:芹澤さんのプレゼンテーションは心が動かされるような優れた内容で、参加者全員が「これは芹澤さんに決めるべきだ」と感じていました。

取締役会の終盤に、社外取締役の松﨑さん(コニカミノルタ取締役会議長の松﨑正年氏)から、「最終的には宮田さんがしっくりくる方に任せるのが良い」と提案されました。その日の夕方には社内取締役だけが集まる会議があり、僕はZoomを開いてすぐに「芹澤さんにお願いしたい」と話し、社内役員内での考えが固まりました。

僕は2017年頃から、芹澤さんには「いつかはCEOを交代してほしい」と話していたのですが、当時は嫌がられていました。そのため、僕としては芹澤さんに引き継いでほしいという気持ちは以前からありつつも、きっと嫌がるだろうなと思い、今回もそこまで強くプッシュしていませんでした。

ただ、芹澤さんの口から自然と「CEOをやりたい。CEOになったら、こういうことがやりたい」という言葉が出てきました。本人は先ほど謙遜した発言をしていましたが、強い熱意を感じ、その言葉を聞いて「任せたい」という気持ちになりました。

──芹澤さんのプレゼンテーションのどのような部分が取締役会参加者の心を引きつけたのでしょうか。

宮田:僕の場合は、具体的な内容よりも、プレゼンテーションから感じられる熱量が大きかったです。それに加えて、芹澤さんは「トップダウンでカルチャーを維持し、会社をより良くしていく」とも話していました。

僕はトップダウンが苦手で、自分だけで考えるのではなく、社員たちと会話して一緒に考えていくタイプです。そのスタイルは社員数が100〜150人規模の段階ではうまく機能していたと思うのですが、500人規模では難しい。さまざまな意見を取り入れることで、意思決定が中途半端になってしまう恐れがあるからです。

トップダウンの場合、80%の人たちは幸せになる一方、20%の人たちは幸せにならない意思決定を下すこともあります。僕は20%の人たちに嫌われることを恐れてしまいます。一方、芹澤さんならそれができると思っています。カルチャーや働き方は人によって意見が別れるので、トップダウンで意思決定をする芹澤さんであれば、安心して後任を任せることができます。